佐藤 舜也
同級だった藤倉一郎が『人類は地球の癌か』という題名の本を出版したのは11年前である。大袈裟な題名だと思っていたが、落ち着いて考えてみると藤倉の言う通りで、人類以外の生物が地球の自然経過に手をかけたことはないのだろう。
もともと地球の大気に少なかった酸素が今のレベルになったのは、シアノバクテリアが光合成により酸素を作り出したことで、その後の生物の発展に大きく関与した。単細胞だったシアノバクテリアが企図することはないので、自然経過としてその後の多くの生物の繁栄の起源になっただけのことである。
一方人類は自分達が生きていくための基盤となっている地球に対して行なっているのは人類の欲望のために、多くの生態系を破壊し尽くしていることにやっと気付いているのが現状である。環境破壊が分かっているのに、現状がよければ未来はどうでも良いと言う政治家までいて、そういう人をリーダーにしているのは、自分さえ良ければあとはどうなっても良いという自分勝手な考えの人も少なくないという現実なのであろう。
今食べている肉はほとんど天然のものではなく、何らかの人為的操作が入っているものだが、魚の多くは天然のものであろう。鮭の採卵や、鰻の養殖などはあるだろうし、普段食べる貝類は養殖が主になっているのだろうか。子供のころに田んぼで鰌や、田螺など採って食べた経験のある世代は少なくなっている。天然の魚も遠からずマイクロプラスチックのせいで水俣の海の二の舞になりそうな気がする。
持続可能な自然環境を残すために何ができるのだろうか。孫の時代になって今生きている人が何をしたか、責任が問われるような気がする。ゴミ出しの分別以外にできそうなことは思いつかない老人だが、未来に責任追及がありそうな気がする。
(令和3年4月号)