松浦 恵子
私の家は28年前に建て替えられた。その前は父が生まれた時から住んでいた日本家屋で、建て替え時には築70年を優に越えていた。父が長年暮らし、祖父から引き継いだ建物を潔く建て替えた理由は、当人が寒がりで真夏以外は「足がはっこて我慢がならん」からだった(と思う)。
確かにあの家の冬は悲惨で、隙間風は入るし天井から雪が吹き込む部屋もあった。暖房しても足元は温まらなかったし、廊下に出ればそこは冷蔵庫状態だった。こうして建て替えられた家は温水床暖房で屋内はどこも温度差無し、ついでにバリアフリーの快適居住空間となった。
建物は当時としては(今でも?)変わった(凝った?ややこしい?)造りである。機械室に1階、2階の床暖房用灯油ボイラー、1階の給湯用灯油ボイラー、2階のガス給湯器、配管が収められている。つい最近知ったことだが、一般住宅で2階に温水床暖房を設置することはまずないらしい、構造上けっこう厄介なのだそうだ。こんなややこしい家の構築・設備を完全に理解してくれているのは、この家を建てた工務店時代からのご縁のHさんだけである。
家というのは結構と付け狙われていて「○○ペイントですが外壁を塗り替えませんか」という売り込みが飛び込んでくる。「それは工務店に頼むから不要」と答えると「いやあ。工務店なんかはねえ〜」と返してくるので「あんたにこの家の何がわかる、外壁だけ他所に任せるわけにはいかないんだよっ!」と(もう少し穏やかな言葉で)追い返す。
4年前に私がこの家を引き継ぐことになった。そうなってみると家の維持の大変さが半端じゃないことがよくわかる。毎年のように器機の交換、補修が発生している。1階給湯器の交換、2階ガス給湯器交換、トイレ水洗の不具合(別々の時期に3回)そしてこの冬2階の床暖ボイラー交換。つど「Hさ〜ん、お願い!」と連絡する。つい最近、Hさんが私より4歳年上と知った。Hさん、我が家のためにもどうかずっとお元気でお付き合いください!
(令和3年4月号)