阿部 志郎
春の訪れに誘われ“春の大三角形、春の星座”を探しに夜空を見上げながら思った。
“宇宙の創世は138億年前のビッグバンで始まった”と言われている。
これはハッブル氏が天体観察で全天の星々は地球から遠ざかっている現象に気づき、時間を逆算しての発想だが“無から有が生まれた”との奇抜な提唱は理解できない。
この広大な宇宙が突然、一点の爆発から始まったとは想像すらできない。
“素粒子の揺らぎ状態の真空=無”を異次元の量子物理学理論を駆使し、マクロな物理学へ適用する事に違和感をおぼえる(禅問答や手品師の世界みたい)。
宇宙は単方向に膨張を続け、やがて均一に拡散し暗黒の超寒冷空間で終焉を迎えるという。
しかし、我々の自然界を眺めると“昼と夜、春夏秋冬、月の満ち欠け、生物の子孫継承、心臓の拍動”など輪廻形式(巡って元の位置に戻る)が大半である。古代人が発想した“水平線の縁は崖”の発想が、実は地球は球状であり原点に戻る“輪廻”構造であった。
自然界を支配する時間は止められない。しかし、現状を維持し動きながら止める方法が“動的静止”である。月が地球を周回し再び原点に戻ったり、生物が子孫を残し種族を維持するのも、これは輪廻であり動的静止である。
自然界の多くに見られるこの法則が、宇宙にだけ例外であるとは考えにくい。
電波で宇宙の縁を探査すると、宇宙マイクロ波背景放射を全天から観測できる。
その中にリング状の形態が画像で複数みられその解釈には多々あるが、以前の宇宙の残像ではないかと提唱する学者もいる。彼等は膨張と収縮を繰り返す宇宙を想定し一周期を“イーオン”と呼んだ。これは“宇宙の輪廻”であり自然界の大原則に合致する。
ビッグバンで膨張しその過程で内部に阻止因子が作られ所定の位置で停止し収縮に転ずる。
四季の変化を調べるに、秋のサンプルを採取し季節変動を調査しても冬への枯渇因子だけで芽生える春の予測は不可能だ。まして四季全体の把握はできない。同じ事は宇宙動態の研究でも言えるはずだ。膨張期のサンプルだけでは宇宙全体の変遷を云々できない。
高速度で膨張する宇宙を包む空間がどのように予め準備されているのか想像がつかない。
138億光年以上先からの光は届かず、膨張する宇宙の縁の先は見えないという。
輪廻宇宙なら、膨張停止地点のある閉鎖空間を想定すれば理解できる。
宇宙は収縮過程から最終収縮地点に達すると超過密による内圧の反発力が収縮力に押し勝ちビッグバンを起こし膨張期へ反転する。宇宙の終焉は誰も目撃できないので、自由度の高い想像を膨らませ楽しめるのは嬉しい。オックスフォード大学・宇宙物理学のホーキング教授も虚数宇宙・多次元宇宙など数学的知識で空想を膨らませ楽しんでいた。
7年前より5億光年規模の宇宙地図が実測に基づき製作中。全体の1/100万程度だが太陽系を含む数千億個が構成する天の川銀河、その数千個の銀河がおとめ座銀河団を作る。
その銀河団が約30個集まり火の鳥の姿に似たラニアケア超銀河団を形成する。多数の銀河団は流水の如く重力源“グレート・アトラクター”に収束している。宇宙地図は謎解きの出発点だ。ロマン溢れる広大な宇宙は想像力で自由に飛べる大好きな空間でもある。
(令和3年4月号)