勝井 豊
毎年冬になると、ある程度の数のインフルエンザ患者が来院し、抗原検査をおこなったり、抗インフルエンザ薬を処方したが、この冬はインフルエンザやその疑いのある患者は、全く来院しなかった。他の医療機関でも同じようで、新聞の報道によると新潟県内の感染報告数は例年の0.07%で、学級閉鎖はなかったとのことである。またRSウイルス感染症や手足口病などの感染症報告数も減少していたとのことである。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を予防するために、マスクの着用や手洗いの励行、咳エチケットなどの標準予防策の徹底やアルコール消毒などが行われたことにより、インフルエンザの感染が減少したそうである。その他にも、密集・密閉・密接などの「3密」の回避や、旅行者の減少、イベントの開催方法の変更なども、流行を抑制したのではないだろうか。この傾向が今後も続くのかどうかは、アフターコロナの時期になっても、こうした取り組みが、習慣として定着するかどうかに関わってくると思われる。せっかく身についた「よい習慣」は、「喉元を過ぎれば熱さを忘れる」ことにはなって欲しくはないものである。
ひとつ気になるのは、インフルエンザが流行しない病気として認識されてしまうことである。特にインフルエンザ予防接種については、夏のうちにワクチンの購入を予約して、高齢者を対象にした定期接種が始まる10月1日から実施しているが、この冬にインフルエンザが流行しなかったことが影響して、来シーズンの接種希望者が激減しないだろうか。
長年に亘って作り上げられてきた予防接種の体制を見直す必要はないと思っているが、今年度におけるワクチンの製造計画は例年と同じなのか、接種希望者は減少しないのかを早く知りたいものである。
(令和3年4月号)