大滝 一
はじめに
新型コロナのためにまだしばらく海外旅行には行けそうにありませんので、今回は2019年のゴールデンウィーク(GW)に出かけた北イタリアの旅行記をお届けします。すでにイタリアに行かれた方には楽しい記憶を思い起こしていただき、これからの方はイタリアに想いを馳せながらお読みいただければと思います。
さて皆さん、海外旅行が解禁となったらまずどこに行きたいですか。2018年の世界観光客数トップ10を見ると、1位フランス、3位スペイン、5位イタリア、7位イギリス、8位ドイツとヨーロッパが5カ国で半分を占めています。その他は2位アメリカ、4位中国、6位トルコ、9位メキシコ、10位がタイとなっています。
2019年のGWは10連休、私はフランスとスペインは行きましたので、ドイツ、スイスや北欧も考えましたが、やはり世界遺産の数が世界一で、パスタ、ピザにワインなどの味と彩の豊かな食文化を持つイタリアを旅行の地としました。
平成から令和に移行するこの年のゴールデンウィークは、急患診療センターの運営も心配された10連休でしたので、いつもより早めに旅行会社にお願いしました。しかし、さすが10連休、ヨーロッパ方面が大人気で、弟夫婦と4人分の羽田と成田発イタリア行きのチケットは取れない状態でした。
そこで最終的には関西空港からの旅となりました。娘から関空もいいよ、と聞いていたので、これもまた一つの楽しみとなりました。
4月26日の午後2時の飛行機で大阪に飛び、そこからリムジンバスにて1時間半で関西空港に着きました。ふるさと納税で一時話題となった大阪の泉佐野市から空港島への連絡橋が思いのほか長く驚きました。長さは3,750mだそうで、万代橋が307mなので、その10倍以上の長さで、JRでは新潟駅から白山駅よりも少し先までとなります。
その夜は空港島の日航ホテルに宿泊し、ホテル内の居酒屋「かっぽうぎ」でほぼ定番の居酒屋料理をいただいたのち、とても素敵なお部屋で既にイタリア気分での就寝となりました。
出発
今回はルフトハンザ航空でミュンヘンを経由しミラノに向かう旅程です。まずはミュンヘンまで12時間でしたが、ビジネスクラスで快適に過ごさせていただきました。ビジネスで良かったのは、シートや食事の飛行機の中だけでなく、自宅から関西空港まで荷物を無料で運んでいただいたことで、国内の移動が本当に楽でした。
途中の飛行機内からロシアの大雪原を見ることができ(写真1)、その広大さに感動しました。赤ワインと食事も美味しく、家内は初のビジネスクラスで、興奮したのか感動したのか、あまり眠れなかったようでした。
ミュンヘンで乗り換え、アルプス山脈を越え1時間ほど、現地時間の夕方5時半ころにミラノに到着しました。この日の夕食は機内食が遅かったこともあり、お腹が一杯で機内で配られたおにぎりなどで簡単に済ませました。
ホテルですが、イヤー、やっぱり日本とは違いますね。関空の日航ホテルがいかに素晴らしいかが分かりました。まず、カードキーでドアが開かない、クローゼットのハンガーが2mの高さにあり、家内は背伸びしても届かない。バスタブの給湯蛇口がバスタブの真ん中にあり出っ張っていて、入浴の邪魔になるなど、日本の常識では考えられないことがいくつかありました。
ミラノ
観光初日、何と言っても目玉は、ダビンチの最高傑作「最後の晩餐」です。サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会というさほど大きくはない教会の中に描かれていました(写真2)。これは何をおいても必見です。多くの観光客が訪れるため、絵の保護として15分に1回、30人だけ入場できます。予約なしでは絶対に見ることができませんので、個人旅行の場合などは要注意です。約500年も前にダビンチがこの場所でこの絵を書いたと思うと、実に感慨深いものがありました。写真を撮ってもよいというのが有難かったです。絵の詳細についてはガイドブックなどを一読ください。とにかく素晴らしいです。
次いでミケランジェロの最後の彫刻が展示されている、スフォルツェスコ城(写真3)に寄り、500年をかけて建造されたミラノのシンボルであるドゥオーモを訪ねました(写真4)。とにかく大きい、そして全体の色合いがとても美しく、天に向かってそびえる尖塔が目を引きました。全部で135本もあるとのことです。仰ぎ見る内部のステンドグラスも、見ごたえ十分でした。ここは、屋上に上ることも可能とのことで、天気の良い日にはアルプス山脈が眺望できるそうです。
昼は、ミラノが誇る郷土料理、コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ(写真5)をいただきました。これは薄く叩いた仔牛の肉を揚げたカツレツです。柔らかくジューシーな肉とサクッとした衣が絶妙で、量的には少々多めでしたが、あっという間にたいらげてしまいました。
ミラノはファッションの町として有名ですが、建築物も独創的なものが多くバスの車窓
からも町の景観を楽しむことができました(写真6)。ミラノからベニスへの移動の途中で、イタリアをガイドすること200回以上という
ベテランガイドさんのお勧めで、結構な値段の「MARONE」というワインを購入しました。旅行中に飲みましたがこれは絶品でした(写真7)。
ベニス
食後バスで移動すること3時間半、本日の宿泊地べニスに到着です。ベニスはイタリア語でベネチアとなりますが、いずれも「水の都」という意味で、別名「アドリア海の女王」とのことです。恥ずかしいのですが、このベニスの本島などには車が入れず、移動は全て水上バス・タクシーやゴンドラであることを初めて知りました。本島への移動は写真8のような感じになります。ここでは救急車やパトカーも救急ボート、パトロールボートでした。翌日乗ったゴンドラの案内人の話では、ベニスは118の島からなり、400の橋、500のゴンドラがあり、海抜はなんと85cmとのことでした。そういえば2018年11月には高潮で水没したサンマルコ広場がテレビで放映されていました。
ここではベニスで一番人気の「スターホテル・スプレンディド・ベニス」に宿泊し、シーフードとティラミスを美味しくいただきました(写真9)。ビールとワインも勿論です。
翌日はドゥカーレ宮殿とサンマルコ広場、さらに有名なベネチアングラスの工房を見学しました。私にはそれら以上に仮面にそそられました(写真10)。そして、魅入られてしまった仮面を一つ購入しました。それが写真11で、5万円しましたが、私がベニスに来ることを待っていたかのように思えてなりませんでした。現在は院長室の壁にかけてあり、毎日仰ぎ見ては「いいなあ!」とつぶやいています。
ベニスといえばゴンドラクルーズがあまりにも有名です。無数ある運河をゴンドラに揺られながら味わう旅情は何ものにも代えがたいものがありました(写真12、13)。行き交うゴンドラの異国の旅人に笑顔で「チャオ!」と自然に声をかけてしまう、そんな雰囲気でした。
ベニスを堪能し、午後はこれまた名所の多いフィレンツェに向けて3時間のバス移動です。
フィレンツェ、そしてピサ
夕刻に到着し、まずはフィレンツェの街を一望できるミケランジェロ広場からの眺望を楽しみました。写真14では小さいですが右手にドゥオーモ、左手にヴェッキオ橋が見えています。その夜は高級レストランで美味しいワインをいただきながらの晩餐となりました。
さて、翌日は午前中にフィレンツェの象徴であるドゥオーモの周囲を歩きながらヴェッキオ橋を渡り(写真15)、その後にヴェッキオ宮殿を見学しました。そこでいろいろなアートを見ましたが、私が最も心を引かれたのは展示されていたダビンチの数々のスケッチでした。物理的、数学的才能と美術的才能、こんな人がいたんですねえ、まさしく稀にみる天才とはこの人のことをいうのだと思います(写真16)。
午後は斜塔であまりにも有名なピサへと向かいました。ピサの印象ですが、まず斜塔は写真などで何回も見ていますが、その周りにドゥオーモなどいろいろな建築物があり、ピサは斜塔だけではなく緑の芝生と周囲も含めて素晴らしいと感じました(写真17)。そして、斜塔が思いのほか大きく、綺麗だったのも驚きでした(写真18)。鉄板構図の写真ですが、手が斜塔にめり込んでしまいました。
この斜塔は、12世紀に建築が始まったものの、度重なる戦いのために完成したのが約200年後だったそうです。建設中からすでに傾きだしたそうで、1990年は入場を禁止して、今後さらに傾くことがないように大規模な工事を行ったとのことです。これから300年は傾かないそうです。一体どのような工夫をしたのか興味があるところですが、真直ぐにしなかったところがいいですね。
この塔に登ってきました。最上階の7階まで294段の階段だそうですが、運動不足もあり3階くらいで息が上がり足もきつくなりましたが、何とか登りました。最高部が57mで、高所恐怖症の私は下を見ることはできませんでした。低いほうは56mとのことです。斜めの建物の階段を下るときが思った以上に大変で、降りてきたときには平衡感覚がおかしくなり、軽く酔っているような感じでした。芝生に腰を下ろし晴天をバックに見た斜塔は、白さが際立っていてとても綺麗でした。全く関係ありませんが近くにいた猫もとても気持ち良さそうでした(写真19)。
ピサを堪能し、一時間半バスに揺られてフィレンツェに帰ってきました。さて夕食です。昨夜は高級レストランでのディナーで、今夜はベテランガイドが勧める街の中のステーキレストランです。写真をご覧ください(写真20)。シェフが「この店は最高さ!」といわんばかりに肉を捌いておりました。勿論美味しかったですが、驚いたのはこのお店が推薦する最高牛肉が「松阪牛」だったのです。食の宝庫イタリアでも日本の食材は一目おかれているということが分かり、嬉しかったことは嬉しかったのですが、イタリアまで来てわざわざ「松阪牛」でもないかなと思いました。
★明日はウフィツィ美術館ですが、続きは次号の後編に続きます。
写真1
写真2
写真3
写真4
写真5
写真6
写真7
写真8
写真9
写真10
写真11
写真12
写真13
写真14
写真15
写真16
写真17
写真18
写真19
写真20
(令和3年9月号)