山﨑 芳彦
我が家の所有する古家の空き地に、2本のアンズ(杏)の木がある。15年程前にアンズと言う名前にあこがれて、50cmくらいの苗木を植えたものだが、今は3-4m位の大きな木に育っている(写真1)。春には桜の開花より少し先に、濃いピンクの花を一面に咲かせる。この木は毎年数十個、ポリバケツ半分ほどの実をつける。実の直径は6-7cm、桃よりも2回りほど小さい。木の上で完熟したアンズはオレンジ色で、所々赤い衣をまとうように色づき、魅入るような美しさである。ただこの様に熟すると、とてもデリケートで傷みやすく、市販には適さない。たまに店頭に出ているものはまだ若いアンズをとったもので、固くて薄いオレンジ色である。しかしながら、我が家の木は老朽化し始め、実の数も少なくなってきている。これらが6月下旬から7月上旬にかけて一斉に熟す。味は柔らかく甘みも出てきて、そのままでも十分おいしいが、やはり最高のものはジャムであろう。アンズの特産地ではドライフルーツにしたり、砂糖煮(コンポート)も作られているようだ。カラコルムで、現地の人がドライフルーツにしたものをかじりながら山道を登っていると、ここに登山に行った医師から聞いた。果肉の色は鮮やかなオレンジ色で、酸味が少ないが、甘みはほどほどである。しかし、これをジャムに加工すると酸味が増し、おいしさが全く違ってくるように思う。オレンジ色の果肉のみずみずしさ、甘みなど絶品となり、これに酸味がほどよく加わって申し分ない。最近の果物はいずれも糖分濃度が高まり、イチゴにしろ、ブドウにしろ、リンゴにしろ、甘みが強烈となり、多くの人にとっては食べやすくなったと思うが、自分にとっては酸味が少なくなり、物足りなく思う。
ジャムの作り方は簡単で、まず果実を水洗いし、変色している果皮があればこれを取り除き、実の中央にナイフを入れるとパカッと開くので種はとりやすい。あとはグラニュー糖を加えてひたすら煮詰める。水飴を加えるとジャムの色艶が増すようである。原材料以外の添加物は一切加えない。焦げないようとろ火で1時間くらいゆっくりと煮詰める。ステンレスの厚い鍋で煮るとよりよいようである。空気を抜くため、まだ冷めないうち滅菌したガラス瓶に入れてから冷やす。すぐに食べなければ冷凍しておく。こうすれば必要なときに暖めて作り直すことができる(写真2)。こうしてできたジャムは子供たちに配ったり、ちょっとしたお土産に差し上げたりするのだが、多くの人によろこばれている。自分でジャムを作るという方には、実そのものを提供しており、おいしくできたと喜びの感想をいただいている。まずは味がよく、酸味がきいて食べやすいこと、アンズそのものには費用がかからないこと、作る手間もあまり必要としないこと、ピューレにしておけばいつでも作り直せるなどがその理由であろう。我が家では、毎日パンに塗ったり、ヨーグルトに入れて食卓をにぎわせている。あちこち配られて、ちょっとした家同士の交流を図り、まるで小さな外交官の役割を果たしている。