新潟市医師会報より
『ロケットマン』
岡田 潔
この映画とクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』『エリック・クラプトン』を勝手にロック映画三部作と呼んでいます。テーマはそれぞれ違いますが、3本ともアーチストの人生すべてをさらけ出した凄い作品です。
クイーンはパッション、性的嗜好はバイセクシャル。
クラプトンはとても悲しいドキュメンタリー、ひたすらに女性を求める人生。
エルトン・ジョンの『ロケットマン』、半分はお笑い映画です。メインテーマは同性愛、一言でいうとキワどい！
エルトンは背が低く、小太りで、頭髪も薄めのロックスターです。眼鏡のスターは珍しいです。彼は40代の初め、アルコールとドラッグ、処方薬依存症、過食症の更生施設に入ったことがあります。この映画はエルトンの実体験に基づいていて、しかも本人がプロデュースしています。冒頭、ショッキングオレンジのラメ入りジャンプスーツに、真っ赤な羽を背負って、頭には悪魔の角を生やしたステージ衣装で登場するエルトンは、まるでピエロです。映画は、彼が更生施設のリハビリで、仲間たちに自分の生い立ちを告白するところから始まります。
のちにエルトン・ジョンを名乗る、1947年生まれの少年レジナルドは、父親や母親に愛されていないことに絶望します。1969年、デビュー直後からヒット曲を連発すると、同性の恋人ジョン・リードを自分のマネージャーにします。二人が出会った日の、迫真のベッドシーンはかなりのインパクトがあります。その後、出すレコードすべてがミリオンセラーを記録、当時の世界のレコードの売り上げの5％がエルトンでした。世界的スーパースターになってからも、また両親から愛してないと言われて孤独を味わい続けます。
「僕はひどい薬物依存だった、ドラッグやアルコールに溺れていた、常用していたのはコカイン、マリファナ、アルコールの3つだった、絶望のドラッグと呼ばれるヘロインを、間違ってやったことがあったけど、本当に怖かった、コカインは基本的にはセックスのためだ、酔っ払うと最低だよ、目が覚めると何も思い出せない」本物の愛が得られないから、慰めを求めたと、更生施設の仲間に白状します。ついには、恋愛のもつれで自殺まで図りますが…
エルトンはもう28年間禁酒を継続。25年前、夫！デヴィッドに出会い、今はちゃんと愛されていて、2人の息子ザッカリーとイライジャを育てています。
（令和3年10月号）
