大滝 一
前号に続くイタリア紀行の後編で、今回はウフィツィ美術館から始まります。
ウフィツィ美術館
フィレンツェ二日目の今日は、とても楽しみなウフィツィ美術館です。その前に、この日の朝テレビをつけると、日本において平成から令和へと変わったことが放送されていました(写真1)。日本における時代の変遷をイタリアで見届けることになりました。
さて美術館ですがウフィツィ美術館は世界の10大美術館の一つとされていますが、この10大美術館、皆さんいくつ挙げられますか。私は6つでした。まずフランスのルーブルとオルセー、スペインのプラドとロシアのエルミタージュ、そしてヴァチカン美術館とこのウフィツィです。その他にはアメリカのメトロポリタン美術館とワシントン・ナショナル・ギャラリー、イギリスのロンドン・ナショナル・ギャラリーとオーストリアのウィーン美術館だそうです。これらはいつか全制覇するつもりですが、アメリカのボストン美術館も是非訪れてみたいと思っています。
ウフィツィ美術館も有名画家による絵画がたくさんあり、ボッティチェッリの「ビーナスの誕生」はとても有名ですが(写真2)、私はやはりダビンチが好きで、未完成で少々気味の悪い感じがしなくもない「東方三博士の礼拝」が一番気に入りました(写真3)。またエピソードで面白いと思ったのは写真4の「キリストの洗礼」で、ダビンチの師匠ヴェロッキオとの共作で、絵の左下の子どものどちらかをまず師匠が描き、そのあとダビンチがもう1人を描いたそうです。その出来栄えを見た師匠は、ダビンチのあまりの才能に驚き、自身はその後二度と絵を描かなかったとのことです。私にはどちらがどの子を描いたのかさっぱり分かりません。
最後に売店コーナーに寄ったところ面白い本を見つけました(写真5)。全編に有名な絵画が掲載されていますが、主役は猫です。フェルメールのあの絵は「真珠の首飾りのニャーゴ(青いターバンのニャーゴ)」になり、ダビンチの「モナリザ」は「モニャリザ」になっていました。約200ページに渡り猫、ねこ、ニャンコ、そしてまたまたネコなのです。ネコ好きには堪りません。
あまりにも気に入ったので購入し、ホテルのラウンジで見ていたところ、隣に英語で会話する
2人の女性が座ったので「This is Monyariza」と言って見せたら、バカ受けしました。
いざローマへ
さて、いよいよローマに向かいます。
フィレンツェからユーロスターにてローマまで1時間半(写真6、7)、乗り心地は新幹線とほぼ同じ感じでした。車中では堺市から来られた循環器内科医のご夫妻といろいろな話をし、私が「心筋梗塞になりステントが入っている」と話すと、「ステントができる前は、バルーンによる治療はあったが根治できず大変だった」とのことでした。今回のツアーは医師が多く、神戸の小児科医、京都の整形外科医、名古屋の歯科医などとご一緒させていただき、同業仲間でいやがうえにも話は盛り上がりました。
まずは腹ごしらえとして、大きなピザ専門店で本場のマルゲリータをいただきました。味はバッチリです。それにしても一人前が大きい!そして厚い(写真8)。家内は半分しか食べられず、ツアー仲間の大柄な男性に食べてもらっていました。私も食べきれず外側の耳の部分は残しました。この耳があってしっかりとした厚みがあるのがナポリピザの特徴で、ローマピザは生地が薄く、パリパリしていて耳も砕けやすいそうです。イタリアでは1人で1枚食べるのが基本とのことですが、多い場合は耳を残してもよいそうです。
次に訪れたのはトレビの泉です。ここがすごい!泉の前の狭い広場に世界中から集まった人々が溢れかえっていました(写真9)。そのような中でもコイン投げはしっかりおこなってきました(写真10)。
その後、歩いてコロッセオに向かいましたが、その途中にもヴェネツィア広場や古い史跡などの見所がたくさんありました(写真11)。
コロッセオはローマを代表する観光地で、映画『グラディエーター』でも有名な闘技場で長径が188m、短径が156mで高さが48mもあるとのことです(写真12)。もともとは4階建てで、5万人を収容できたとされています。兵馬俑やピラミッドもそうですが、紀元前にこのような建造物を作ることができた技術力と政治的力には感服します。
コロッセオにもまして私が興味を持ったのは、隣に立つ高さ21mのコンスタンティヌスの凱旋門でした(写真13)。ガイドさんの話では、この凱旋門を見たナポレオンがフランスに持って帰ろうとしたが大きすぎてできず、これより一回り大きな高さ50mのエトワール凱旋門をパリに作ったとのことでした。この門は1960年のローマオリンピックで裸足の王者といわれたアベベ・ビキラ選手が、アフリカ黒人初の金メダリストとなったマラソンのゴールでした。アベベ選手はこのオリンピック前に靴が壊れたため、新しい靴をローマで買おうと思ったところ、自分の足に合う靴が見つからず、やむを得ず裸足で走ったとのことです。幼い頃からエチオピアの野山を裸足で走っていたからこそなせる業です。
このあと「嘘つきは手を噛まれる」という「真実の口」に手を入れてみましたが(写真14)、幸いにして噛まれることはありませんでした。実はこの写真の「真実の口」、偽物です。本物はコロッセオから歩いて15分ほどの教会にありますが、写真はローマ三越の地階にあり、買い物の途中に見つけたので定番となっている「手入れ」をしてみました。
夜はガイドさんお勧めのレストランで絶品のパスタと白ワインでお腹を満たし(写真15)、大満足の一日を締めくくりました。
そして最終日、ヴァチカン美術館
いよいよイタリア紀行も最終日となります。本当にイタリアは北イタリアだけでも見所満載ですが、ここにきてまだヴァチカン市国と美術館、サン・ピエトロ大聖堂が残っているのです。ミケランジェロの傑作「最後の審判」もシスティーナ礼拝堂で見ることができます。
早朝にも拘らず美術館入り口にはもう既に多くの人からなる行列ができていました(写真16)。ヴァチカン市国はいわずと知れたキリスト教のカトリック世界の中心で、世界最小の独立国です。東西南北700m四方の国に住民は800人あまりで、そのほとんどが聖職者とのことでした。
まずはヴァチカン美術館です。圧巻だったのは奥行き120mにもおよぶ地図のギャラリーです(写真17)。壁にはイタリア各地の地図が掲げられ、天井の黄金の煌びやかさはヴェルサイユ宮殿を彷彿させられました。ラファエロが古代ギリシャの哲学者アリストテレスとプラトンを中心として描いた「アテネの学堂」もしっかり脳裏に刻んできました(写真18)。写真上段中央の右の青い衣がアリストテレスで、左のオレンジの衣がその師匠のプラトンです。下の机に片肘をついているのがヘラクレイトスとのことです。
さて、いよいよミケランジェロの傑作中の傑作「最後の審判」です。ここは残念ながら写真撮影ができません。でもこっそりスマホで撮っている人も見かけました。そして、その大きさは縦14m、横13mと超大作で、とにかく圧倒されます。殆どの皆さんが、口をあんぐり開けて仰ぎ見ていました。2016年に徳島の大塚国際美術館で撮った「最後の審判」を提示しますので参考とされてください(写真19)。この大塚国際美術館の作品はシスティーナ礼拝堂の本物とほぼ同寸大とのことですが、色彩的には大塚国際美術館のほうが鮮やかです。
大満足したうえでサン・ピエトロ大聖堂に足を踏み入れました(写真20)。世界最大のカトリック聖堂とのことですが、これもまた凄い!16世紀に建築が始まり、ラファエロやミケランジェロなどが主建築家として任命され、完成は1626年とのことです。ミラノの大聖堂も凄かったですが、このスケールの大きさにはただただ驚愕するばかりでした。
大聖堂の前に広がるサン・ピエトロ広場から、コンクラーベの際に結果を煙で知らせる建物を見て(写真21)、国境線を跨いで世界一小さな宗教と芸術大国のヴァチカンからイタリアへと戻りました。
その後に『ローマの休日』で有名となったスペイン広場(写真22)を通りましたが、ここもさすがによく知られており、多くの観光客が記念写真を撮っていました。ここと、トレビの泉、システィーナ礼拝堂はとくにスリに注意が必要とのことでした。
ここで昼食を取ることになりましたが、ベテランガイドさんからローマで有名な日本食の美味しいお店があると紹介していただきました。そろそろ日本食が恋しくなっていたところなのでそのお店「hamasei」(写真23)に数人で伺いました。スペイン広場から歩いて10分ほどで、イタリアで日本食が食べたくなったらここを是非お勧めします。メニューは寿司、うどん(写真24)、ラーメン、おむすび、お茶漬け、しゃぶしゃぶにすき焼き、一品料理として湯豆腐やたこわさなどもありました。日本酒も八海山や久保田の千寿などがおいてあり、お店は満杯で人気のほどが伺えました。とても素敵な個室もあり(写真25)、箸袋には箸の使い方の説明が書かれていて(写真26)、日本人以外の方々も箸を上手に使って日本の食を楽しんでおられるようでした。
昼食後はホテルで一休みし、ローマ駅地下のショッピングモールをぶらぶら散策し、タイでのHUBLOTの失敗が頭をよぎりましたが、気に入った時計がありましたので購入しました。今回は値段的にもリーズナブルなものでした。
そして夜は、パスタに舌鼓を打ち(写真27)、ワインもいただきイタリアでの最後の晩餐となりました。
帰りもミュンヘン経由でビジネスクラスにて関空まで帰ってきました(写真28)。フルフラットで横になれるのは本当に楽ですし、疲れの度合いが違い、帰ってからの仕事への復帰もスムーズです。好きな映画を観て、お気に入りの音楽を聴き、食事もサービスも最高で、飛行機そのものを十二分に楽しめるのがビジネスクラスと思います。ファーストクラスは未経験です。
まとめ
今回は北イタリアの旅でしたが、とにかく見所超満載です。ミラノ、ヴェニス、フィレンツェ、ピサ、ローマ、そしてヴァチカン。実質的には5日間の旅でしたが、同じコースをもう一回りしたいくらいでした。歴史的建造物、芸術、そしてワインと食、どれをとっても十分に満足のゆく旅でした。
イタリアに200回行っているベテランガイドさんに言わせると「北イタリアは有名だが、南イタリアの方が面白い」とのことです。いずれはナポリ、ポンペイ、アマルフィ、アルベロベッロにシチリア島を訪れてみたいと思っています。
イタリアいいですよー! Viva Italia!
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(令和3年10月号)