張 逹聰
「満州娘」は昭和13年に大ヒットした流行歌で作詞石松秋二・作曲鈴木哲夫である。当時の国民学校生が歌うのは御法度だがヒット曲故、歌詞が意味不明でも憶えている。
思い出一:田中元首相が昭和14年陸軍に召集されて満州に出征したある深夜、隊に緊急討匪令が下され、完全武装で酷寒零下の車上で兵隊が意氣消沈の現状を見て、田中氏が突然「満州娘」を声高々に歌い出し、一同これに唱和して場が和み、元気をとり戻したという実話を経験者の手記で読んだ事があります。
思い出二:小学5年の音楽のテストで担任が各々に得意の歌を独唱させ採点するという方式で始めた。K君が「揺れる光だ、緑の風だ」と歌い出すや担任が「止めろ!この戦時下にたるんでいる!」と大声で制止し、場が静まり返った。その後もテストが続きS君の番に「満州娘」の替歌をどこで憶えて来たのか歌い出した。一同ハラハラして聞いていたが担任は怒る事もなく最後まで聞いてうなずいていた。きっと良い点をつけたのではないでしょうか。その元歌と替歌を紹介します。
元歌
私十六満州娘
春よ三月雪解に
迎春花が咲いたなら
お嫁に行きます隣村
王さん待ってて頂戴ネ
替歌
新聞ラヂオや大本営で
発表以外は皆デマよ
戦い抜こうよ勝までは
銃後の守りは引受けた
大和魂にや敵はない
滿州姑娘 満州娘
流行歌曲滿州娘:流行歌曲 満州娘
十六青春花正芳:青春十六 花正に芳ばし
喜待雪融安吉日:喜び待つ雪融けの大安吉日
從夫出嫁到隣王:夫に從い隣村の王家に嫁ぐ
(令和4年10月号)