永井 明彦
参院選中に元首相が私怨の銃弾に斃れ、カルト宗教と政治家の結び付きが顕らかになった。元首相の祖父が東西冷戦下、米国の世界戦略に沿って韓国発祥の反共カルト教団を迎え入れ、思想的に近い清和会系与党議員と選挙を通じて歪んだ関係を築いた。教団は選挙活動に献身的に協力し、中央政界では党員の資格を得て与党の総裁選挙に決定的な役割を果たしただけでなく、地方自治体も広く汚染された。政治家と癒着した教団は宗教利権を確立し、霊感商法や献金の強制により、淳良な日本人の財産が吸い取られた。その反社会性が問題になると、教団は名称を変更して警察官僚出身の政治家に取り入り、違法行為の摘発や解散命令を逃れた。
朝鮮半島を植民地支配した日本人の贖罪意識を利用して、教団は巨万の富を得たが、与党清和会の嫌韓歴史修正主義者が権力維持のため対極にある「恨の国」の反日カルト教団と裏で結託する構図は、自家撞着の極みだ。日本政府が正しく歴史を認識し過去の植民地支配を謝罪していれば、このようなカルト教団が付け入ることはなかった。日本でもフランスに倣って反セクト(カルト規制)法の制定が必要である。
信者数が少ないにも拘わらず、教団が我が国の選挙に大きな影響を与えた理由は国政選挙の投票率の低さにもある。教団の選挙協力や組織票に支えられた与党は小選挙区制の恩恵もあり、直近では27%の支持で7割近くの議席を占有し、間接民主主義は空洞化している。若者の低投票率はシルバー民主主義といわれる高齢者優遇政策を誘導し、ノイジー・マイノリティーの意見が通り、サイレント・マジョリティーが無視される社会状況を招来する。
民主主義国にも権威主義国家のように投票を強制せずとも投票率の高い国はある。子供も模擬投票に参加し自由な選挙制度教育が徹底され、投票率が高い北欧諸国を参考にすると共に、将来的にはブロックチェイン技術を駆使したネット投票の導入等も考慮すべきであろう。
(令和4年10月号)