勝井 豊
65歳以上を対象としたインフルエンザの定期予防接種が、毎年10月1日から翌年の3月31日まで実施されているのに歩調を合わせて、当院でも10月1日になったら希望者に対して予防接種を開始して、3月31日まで接種に応じている。10月下旬から12月中旬頃までがピークで、毎日5~10人が接種を受けていた。
新型コロナウイルス感染症が国内で流行し始めた最初の年と翌年は、感染予防対策が徹底したこともあって季節性インフルエンザの患者は激減して、例年の千分の1程の罹患率であったと聞いているが、予防接種の希望者はほとんど減らなかった。予防接種はもともと流行の始まる前に医療機関で受けるものである。また新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行を防ぐためにも、季節性インフルエンザの予防接種は必要であると、行政や医師会が積極的に広報活動を行った影響もあったと思われる。
しかし今シーズンは予防接種を受けようとする人が例年ほどには多くなく、接種のピーク時でも1日10人以下しか接種希望者がいないことが多かった。ワクチンは卸売業者が前年度の実績を踏まえて配分してきたので十分な数量が確保できていたのに、肝心の接種希望者が少なくてお手上げの状況であった。
昨シーズンまでは、かかりつけの医療機関で接種を受けることができないので当院で接種を受ける人がかなりいたが、今シーズンは逆に毎年予防接種を受けていた人が接種を見送る場合も散見され、結局予防接種を受けた人数は昨シーズンよりも2割近く減少してしまった。新型コロナウイルス感染症の感染症法上の扱いがインフルエンザ並みの「5類」になることが決まっているが、そうした動きがインフルエンザ予防接種の実施によくない影響を及ぼさないことを願っている。
(令和5年4月号)