阿部 志郎
過日、ウイルスの検索に学生時代の参考書を開いた。その折、“動物ウイルスの場合、すべて正20面体で正三角形の面が20、頂点が12個、この蛋白殻(カプシド)の中に裸の核酸が内蔵されている”の記載をみつけた。
球体は表面積が最小で体積が最大な対称構造だから、容積を最大にすべく究極の球体に一番近い正多面体なるよう35億年の迂遠の時間を費やし試行錯誤の末に到達したのだろう。正多面体の最大面数は正20面体であるとの証明を試みた。
“数学的代数計算による…正20面体以上の正多面体は存在しない事への証明”
正多面体の各面を正p角形、正多面体の頂点に集まる面の数をqとする。
一般にp角の内角の和は、(p-2)×180度である。(p、qは共に正数)
(p角形の一つの頂点と各辺を結んで、p角形内に(p-2)個の三角形ができるから)三角形の内角の和は180度なので、p角形の内角の和は(p-2)×180度となり、正p角形の各頂点の内角は、(p-2)×180度/pとなる。
正多面体の一つの頂点にはq個の正p角形が集まるので、このq個分の角の和は
{(p-2)×180度/p}×q … これは360度より小さいはずである。
(360度では平面になって、立体にならない)… よって、以下の不等式が成り立つ。
{(p-2)×180度/p}×q<360度
変形して…(p-2)×q<2p → pq-2q-2p+4<4
この不等式を整理すると…(p-2)(q-2)<4となる…①
この不等式①を満たす正数、pとqの組み合わせは以下の5種類のみである。
(3、3)…正4面体
(3、4)…正8面体
(3、5)…正20面体
(4、3)…正6面体
(5、3)…正12面体
以上より、最大の正多面体は正20面体で、それ以上の正多面体はないとわかった。
補足:(p-2)(q-2)=4の時は、平面となる。
p=6、q=3の場合。正6角形で敷詰められた平面…自然界では昆虫の複眼など。
p=3、q=6の場合。正3角形で敷詰められた平面。
p=4、q=4の場合。正方形で敷詰められた平面。
余談:自然界では他に…花弁の数が数学的な級数?ヒマワリの種の配置なども数学的?
一方、ウイルスの生物学的複製システムがコンピューター関係者に同一視され参考になるらしく共同研究の機運あり?蓮の葉が表面に水滴を作る現象の技術的応用など自然界から発想を得て技術革新が行われる。自然界に科学技術進歩のヒントあり。
ウイルスも迂遠の時間をかけ試行錯誤しながら進化する…人間の思考と同じように。
あらゆる意味に於いて、自然界への興味は尽きない。
(令和5年4月号)