本間 隆夫
私は姉がアイルランド人と結婚していたので何回かアイルランドへ行きました。姉の帰国後は北アイルランド武力闘争のIRA共和軍から駐日大使に至るまで沢山のアイルランド人が佐渡に遊びに来ました。彼らとビールを飲みながら色々話をするのは楽しいもので、中でも独身で年齢が近かった駐日大使のDeclan O`Donovan閣下とは特に気が合いシーカヤックを漕いだり古町の居酒屋で飲んだりもしました。彼らを通して酒関連のお馴染み英語の意外な語源を知りました。Declanによればウイスキーは本来はアングロサクソン系のイギリス人の酒ではなく、海沿いに南欧から移住してきたラテン系民族であるケルト人(アイルランド人)の持ってきた酒で、ケルト語(アイルランド語)での、Uisce Beataaウィスケベター(= water of lifeの意味)がWhiskeyとなったのだそうです。ちなみにご存知でしょうか。今でもスコッチなどイギリス製のウイスキーはWhiskyですがアイルランド製はWhiskeyなのです。さらに、パブは酒場という意味ではなく、Public House,つまり住民の誰もが来て自由に使って良い公民館的施設の略称だそうです。確かにアイルランドの田舎のPubに行くと立派なカウンターがあって酒がズラリと並びバーテンダーがいるのですが、午前中から開いており昼間は近所の婆ちゃんが幼子を遊ばせ、爺ちゃんがのんびりとコーヒーを飲みながら新聞を読んでいます。夜になると自宅で夕食を終えた住民が三々五々集まってwhiskeyやGuinnessを立ったまま飲みながら会話で盛り上がるのです。椅子やテーブルは少なく、足が疲れるとよりかかって片足を乗せて休むため、カウンターの下には太い木のBar(=棒)が横渡ししてあります。これがBARの語源だそうです。などなど、欧州随一の親日国アイルランドはイギリスの陰になって意外と知られていません。PubやBarや街角のあちこちで演奏されているケルト民族の音楽も日本人の感性に合う感動ものです。
(令和5年10月号)