松浦 恵子
今でこそ、そこそこ自転車を乗りこなしているつもりの私が自転車に乗れるようになったのは18歳の時でした。私の運動神経の鈍さは折り紙付き、外遊びが苦手な子供でした。父は自転車に乗れず、母は乗れると言っていましたが乗っている姿を見たことはなく、家に自転車がない環境でした。同年代の子供が学齢期前後に大人自転車の三角乗りや補助輪付きの子供自転車で自転車デビューを果たす姿を、さして気にも留めず育ちました。
それがなぜか、高校を卒業した後で自転車に乗ろう!と思い立ちました。近所に住む叔母(母の妹)が自転車を乗りこなす活発な人で、自転車を貸してくれ朝練にも付き合ってくれました。叔母に荷台を押さえてもらっての練習で、思いのほか時間もかからず一人で乗れるようになったと記憶しています。練習時のアドバイス「ハンドルを強く握っちゃ駄目。軽く握って腕を前に押し出すようにして、手元でなく前の方を見て」を今でも時々思い出します。
その年の夏に高校の同級生と担任だったS先生のお宅を訪問した際、最近の出来事の話題を振られて「自転車に乗れるようになった!」と恥ずかしげもなく告白した記憶があります。その時S先生が「自転車に乗れないとバイクにも乗れないんだよね」とおっしゃったことが忘れられません。バイクは跨りさえすれば走るものと思っていた私は驚き、かつ自転車練習は無駄ではなかった!と思いました。特にバイク乗りを目指したわけでもなかったけれど(数年後、旅先でレンタルバイクに乗った時にS先生の言葉を思い出しました)。
自転車デビューから半世紀(年齢暴露)、今や立派なオバ(婆)チャリダーの私は、傍から「気を付けて」と声をかけられると素直に「はい、気を付けます」と応じ歩行者や車に注意を払い、ヘルメットを着用して乗っています。なので我が子らよ「気を付けてね」の後に「年なんだから」の一言は言わないで欲しいな。
(令和6年4月号)