勝井 丈美
3月7日の夜、りゅーとぴあで催される牛田智大さんのピアノコンサートに行くのを楽しみにしていた。ところが、神奈川在住の叔父が急死して、7日に通夜なしの一日葬をするという知らせがあった。葬儀には参列したいし、コンサートもあきらめたくはなかった。
7日の夕刻、私が乗った新幹線は時間通りに新潟駅に着いた。良かった、コンサートには間に合う。しかし、タクシーに乗って直ぐにクレジットカード、保険証、運転免許証などが入った礼装用ハンドバッグを新幹線の座席に忘れてきたことに、はたと気づいた。とにかく駅員に連絡しなければと、タクシーを降りて駅へと猛ダッシュした。
駅員はすぐに某所に電話してくれたが、車両はすでに車庫に入ってしまっており、その前にざっと点検をした折には、そのような忘れ物はなかったとのこと。落胆した私に駅員は「明日、清掃の折に見つかるかもしれないので、明日じゃなくて明後日ここに連絡してください」とコールセンターの電話番号が書かれた紙片を渡した。それから、付け足しのように「JRのホームページからお問い合わせを検索するとチャットでもできますから」と言った。牛田さんのコンサートには何とか間にあった。
翌日、スマホでJRのホームページを開き、チャットで忘れ物の詳細な登録を終えた。とにかく返信メールを待っているしかなかった。その翌日、それらしき品物が見つかりましたというメールが届いた。こんなにほっとした気持ちを味わったのは、何年ぶりのことか。
新潟駅お忘れ物センターで、メールで送られてきた15桁の明細番号を係員に見せ、私のバッグが出てくるのを待っていた時、一人の中年男性が入ってきた。「誰かの忘れ物があったのでもってきました」と。
(令和6年4月号)