加藤 俊幸
カフェ・オ・レ斑、神経線維腫という特徴的な皮膚病変のRecklinghausen病(指定難病34)にGISTを合併した術後患者さんと再会して、亡き赤井 昭先生を思い出した。
勤務先では消化器科と皮膚科とは思った以上にご相談する機会が多く、内臓悪性腫瘍と皮膚表現の接点を教えていただいた。先生は在職中から海外交流や都市緑化に取り組まれ、病院勤務後には県教育委員として貢献されて叙勲も受けられた。その気品ある人柄と優しさを振り返りながらご指導に感謝したい。
勤務間もなく、20歳代の女性が健診で血圧が測定できないと紹介入院された。両上皮とも脈は微弱で冷感あり。ほかに異常なかったが、頸胸部に白色の帯状模様の多発あり。気になって医局でご相談するとすぐに病棟へ一緒に来てくださって、弾性線維性仮性黄色腫(PXE)と診断。翌日の皮膚生検で確診された。弾性線維が変性し皮膚・眼・血管の障害が出る。ときに鼻出血を生じたが、消化管潰瘍は合併せず、動脈造影では動脈炎はなかった。劣性遺伝で治療法はなく、合併症を起こすことなく過ごされたことを願っている。現在は指定難病166に指定され、全国で300人ほど報告されている。
背部と大腿部に小結節の表皮内癌が多発していた70歳代男性は、皮膚科でBowen病と診断された。内視鏡では4型胃がんが発見されて胃全摘され、本疾患に合併した胃癌の本邦15例目として報告させていただいた(ENDOSCOPIC FORUM. 1986)。この時点で、新潟がんセンターでも53例中13例に内臓癌が合併し、うち胃癌が5例であり、内臓悪性腫瘍の皮膚表現を学ぶことができた。
皮膚疾患が出血源不明の消化管検索に役立つときもあった。胃出血を繰り返した患者さんで胃・大腸と、さらに口腔粘膜・鼻の血管拡張を認め、オスラー病(Rendu-Osler-Weber病:遺伝性出血性末梢血管拡張症:指定難病227)と診断し、レーザー焼灼治療の適応となった。
近年は、難病の解明や分子標的薬などの開発から皮膚科との接点が増している。良い指導者に巡り合えた。
(令和6年4月号)