八木澤 久美子
今でこそ珍しくなくなりましたが、子供連れの海外旅行のお話をします。平成6年12月家族で米国ユタ州ソルトレイクシティに出かけました。私たち夫婦と子供4人(1歳男児、3歳男児、5歳女児、7歳女児)です。出発前考えたことは、とにかく迷子を出さずに無事に日本に帰ってくる事、その対策でした。世界のどこかに人身売買をする人がいてアジア人の子供は高値で売買される。と何かの雑誌に書いてありました。英会話教室の先生(アメリカ人)がロサンゼルス空港内のマクドナルドでポリスがやってきてエンプロイイーが逮捕された瞬間に出くわしたのよ、アメリカって怖い国よ。などいろいろ良くない話がありました。なおかつ我が家の3歳男児5歳女児は迷子のプロなのですから。そこで考えたのが、犬のように子供にリードをつける事でした。一番下の子は1歳なのでずっとおんぶキープで対応、上の7歳児は手をつないでいられるので真ん中のちょろちょろ3歳児、のたのた5歳児用にリードを購入しました。今はわかりませんが子供用リードはトイザらスで販売していました。子供の背中、サスペンダーの交差する部分に付けるのです。嫌がるかなあと思いきや、子供たちは大喜び、伸縮性のある紐でしたので前に向かって走っていっては引き戻されるを繰り返して、ひとしきり遊びました。
出発の日、みっともないからやめろという夫をしり目に、新潟からリードをつけていきました。新潟駅、東京駅、成田空港、ロサンゼルス空港、ソルトレイクシティ空港まで往路約18時間、一番怖かったのは東京駅でした。なんといっても人が多い。リードをつけていてよかったと思いました。それに比べてロサンゼルス空港内は広く静か。人もまばら。待ち時間に子供たちをのびのび遊ばせることができました。
さて次は他力本願もあり、な話です。飛行機の中では私は一番下の1歳児の面倒を見、夫は3歳児の子の面倒を見ますので必然的に5歳女児、7歳女児まで手が回りません。どうしようと思っていましたら、彼女たちの隣の席に座ったアメリカ人のビジネスマン風のおじさんがなんとこの子たちの面倒をみてくださいました。配られた機内食のステーキを1センチ角に切ってくれたり、ジュースのカップをこぼれないように持ってくれたりしてくださったのです。もちろん言葉は英語ですので何を話しかけられたかわかりません。オーケー、オーケー、サンキューなどと言い合っていました。この二人の女児はひいき目で見なくても愛くるしい年ごろで笑い上戸ときてますので飛行機がガタっと揺れてもキャッキャッケラケラ笑いだします。その姿を見たら面倒も見てみたくなるだろうと思っていました。申し訳ないなと思いながらも、時には他力本願でもよいかもねと思いました。復路は中国人のビジネスマンのおじさんがお隣で、まったく同じように面倒を見てくださいました。この方は片言の日本語を話していたらしいのですが、彼女たちいわく日本語だけど何をしゃべっているかまったくわからなかったとのことでした。外国人の話す日本語は子供にはわかりづらいのでしょう。
さて膨大な荷物をどうしたのか、赤ちゃんのミルクをどうしたのか、などまだまだ面白い話がありますがそれは次回といたしましょう。事故なく新潟に帰り着いたので笑い話となりましたが、その当時はハラハラドキドキの大冒険旅行でした。
(令和6年4月号)