佐々木 壽英
新潟がんセンター退職の時、胃がん患者の「胃友の会」が送別会を開いて下さった。その送別会に95歳の西田さんが出席してくれた。86歳の時、胃がん手術を拒んで困らせ、1年後に肝転移切除で生死をさまよいながら合計5回の手術を経験された西田さんが、記念品として小さな銅像「少女立像」を贈って下さった。
立像の足元に「昭三」の刻名はあるが。製作者不明のまま20数年が過ぎてしまった。最近、「美術名鑑」の中に林昭三の名前を発見した。インターネット検索すると、林昭三の作品の中に書斎に飾ってある「少女立像」が載っていた。20数年ぶりに製作者が分かり、私の宝物の価値が上がった。そして、新潟駅の「忠犬タマ公の銅像」の製作者であることも分かった。
このタマは、村松町の刈田吉太郎さんの猟犬で、昭和9年と昭和11年の2度にわたり、雪崩で生き埋めになった飼い主を掘り出し救助した。2度目は、飼い主を含む一行4名全員の命を救った。素晴らしい人命救助犬として、当時新聞に報道されて話題になった。
上越新幹線開業の1982年が戌年と重なったことから、この美談を伝えるため、新潟駅構内に「忠犬タマ公の銅像」が設置された。2024年の4月に新装なった新潟駅構内、2階中央広場の元の位置にこの像は建っている。
林昭三氏は佐渡市畑野町出身で、日展会員、日彫会員、日展特選2回、入選18回、日彫努力賞2回、奨励賞など数多くの素晴らしい作品を残している。2019年に亡くなられた。
少女立像
(令和6年10月号)