勝井 丈美
大学の同期で親友のYさんが、ピアノや歌好きの友人知人に出演を呼び掛けて企画した、「Yと仲間たちによるシルバー音楽会」が今年5月12日に、日本橋東京音楽堂ホールにて開催され、私も出演してきた。貸ホールは客席が40くらいのこぢんまりしたところであったが、ピアノはスタインウェイが入っていた。
出演者は全員女性で10人。遠くは秋田、山形、神戸から参加。5人の方々とは初対面だった。出演者は年齢も経歴も様々で、豪華な有料老人ホームで暮らす90代、現役社長80代、70代は医師3人と茶道の先生、60代はナース、開業医の妻、個人事業主、そしてゲスト出演の端唄と三味線のプロ70代。
演奏順は年齢の高い順。人さまの前でピアノ弾くなんてことは、本当に久しぶりで緊張するわと言っていた、90代と80代のお二人が、それぞれ「エリーゼのために」と「乙女の祈り」を多少ミスしようが、履いていたおしゃれサンダルが脱げてペダルを踏みそこなおうが、動じずにしっかりとしたタッチで演奏され、聞く人を感動させていた。
先輩たちの頑張りに励まされ、ミスを気にせず発表会を楽しもうという雰囲気でピアノ演奏の1部が終了。2部はプロの三味線、端唄から始まって、茶道の先生がお嬢さんのピアノ伴奏で「アヴェマリア」を独唱。続いて4人で2部合唱。フィナーレは観客と出演者全員で3曲を合唱した。その場にいた全員がまるで、同年輩の中学生にでもなったよう。
企画者のYさんの終わりの言葉、「平和があってこその、音楽会です。平和に感謝を」が非日常的な楽しさで高揚していた心に沁みた。
夜の打ち上げでは、皆さんが今日の感想や、この半年間、練習がどんなに大変だったかを語られたが、もう2回目は辞退しますという人は一人もいなかった。
(令和6年10月号)