加藤 俊幸
「72時間」は、毎回ある1つの場所で72時間(3日間)に渡って取材を行い、そこで出会う人間模様を定点観測するTVドキュメンタリーである。当初からの「72時間で撮影を終了」「時系列を崩さず」「偶然の出会いで勝負」の原則を守り、スタッフ3人が取材を行う。救急病院に密着した番組から2005年に生まれ、2013年からは金曜日放送、日曜日に再放送される30分番組である。
その取材場所が実に興味深く、出会った人が今までの歩みから病気や今の思いを素直に語る。県下の燕市公楽園や岩原・苗場スキー場の舞台もあるが、中でも医療関連は興味深い。年代順では、患者たちの相談室(2006):大阪医療センター。夜間救急 果てなき戦い(2013):川越救急センター。大病院の小さなコンビニ(2014):亀田総合病院。出産ラッシュ!日本一の産婦人科(2015):福田病院。命を運ぶ 大病院の引っ越し(2018):東邦大学大橋病院。大病院のコンビニ それぞれの“生きる”(2021):湘南鎌倉総合病院。御茶ノ水大病院の屋上庭園で(2023):東京医歯大病院、などである。
毎年末には、視聴者投票でリクエストの多かった10本が一挙に再放送。10年目の2022年には321本中の歴代ベスト10が放送され、第1位は秋田・真冬の自販機の前で(2015):秋田港近くにあるうどんそば自動販売機、第2位の大病院の小さなコンビニ(2014)は納得の傑作。鴨川市の亀田総合病院内のコンビニには、医者の多忙さも描かれる。この中では当直明けに、その場で栄養ドリンクを一気飲みする女性医師の姿が印象深い。卒後4年目の産婦人科医。病院で泣いたこともあるが、おめでとうと言える仕事と笑顔で語る。気になった視聴者も多かったようで、2022年の特番では遠見医師が自ら近況を語り、子育てと性教育の講演や絵本執筆に励んでいると。その後も活躍を耳にするたびに何故か嬉しい。
(令和6年10月号)