佐藤 舜也
9月になり中秋の名月というのに猛暑日が連続する炎暑である。どこかおかしい感じの日が続いている。庭の松の木にいつもなら10匹以上は見るセミの抜け殻を、今年は一つも見ない。蝉の鳴き声も聞こえないし、蚊も出てこない。蝉や蚊さえも遠慮するような暑さなのかと思う。このままでは日本が熱帯化してマラリアやデング熱が大流行するようになるではと危惧する。
海水温が高くなったことから台風も今まで経験したことがないような動きをしている。幸い当地は避けているが、台風に遭った地方ではこののろのろ台風には大迷惑であろう。
夜戸締りをしようと思ったら台所で電気製品の警告音のような音を聞いた。冷蔵庫ではないようだ。換気扇の音でもない。なにか締まりの悪い時の音だなと思うが分からない。外から聞こえるような気もするので窓を開けてみた。いつも秋に鳴く虫の声である。窓を全部閉めると変な音に変わって聞こえることが分かった。去年までは経験していないので、自分の耳の難聴が進んだのだろうと分かった。虫が電気音に変わって聞こえるとは情けない。
耳が遠くなった自覚はあるのだが、今のところ日常診療には支障ないので放置していた。先日連絡することがあって数年ぶりに2人の弟に電話した。2人とも難聴でよく聞こえないと言うので家人に代わってもらったが、弟達がこんな状態では兄の私が虫を電気音に聞いてもおかしくはない。わが家は老人2人だけなので、テレビの音を高くしたりしても当然だと思っていた。
蝉を聞くことがないような気持になっていたが、ただ難聴が進んだだけではないかとも思う。若者の居ないわが家では確認してみようもないが、炎暑の夏から耳の遠くなったのを再確認することになった。
(令和6年10月号)