勝井 豊
「佐渡島の金山」が世界文化遺産登録されて間もない8月中旬に、佐渡金山を訪れる機会がありました。暑い中を大勢の観光客が来ていました。以前に見学したときよりも更に整備されており、地下の通路の両側には案内のパネルが多数設置されていました。ひんやりと涼しく、外の猛暑とは別天地のようでした。
切羽の場所には精巧に作られた電動の人形が動いており、タガネで鉱石を採取したり、回転式の水汲み装置で排水作業をする様子が、分かりやすく再現されていました。別の場所では、坑道を新しく作るときに行われた、安全と成功を祈願する行事が再現されていました。金鉱石の採取は決して楽な仕事ではなかったので、このような慣習ができたように思われました。
見学コースの出口付近に資料館があり、数層にわたる鉱山の内部の模型や、鉱石が選別されてから精錬されて小判になるまでの多数の工程や作業が、建物や人物のミニチュアやパネルで分かりやすく展示されていました。当時は金の採掘や精練は西洋ではかなり機械化されていたそうで、手工業で高い純度の金を生産していたからこそ、その文化的な価値が評価されて、世界文化遺産に登録されるに至ったことがよく分かりました。
土産物店に入ると本物の小判が高値で販売されていました。江戸時代に作られたものなら、美術的にも文化的にも高い価値があるのでしょうが、あまりにもピカピカに光っているので、三百年前に作られたようには見えませんでした。世界文化遺産に登録されたことがきっかけになって、佐渡や新潟を訪れる人が増えて、地方の文化や歴史をより多くの人々に知ってもらえることを願っています。
(令和6年10月号)