佐藤 雄一郎
メジャーで活躍中の大谷選手は8月23日に史上最速で40-40(40本塁打、40盗塁)に到達した。前人未踏の50-50達成まで本稿執筆中の9月17日時点で本塁打47本、盗塁48個、意見は分かれるところだが筆者はその可能性は高いとみている。さて、戦後の名将三原氏、三原氏と師弟関係かつ姻戚関係にある西鉄ライオンズ中西氏の系譜にある栗山氏は(私見)、その影響を大きく受けた。中西氏から渡された三原ノート1)の真髄が2023年のWBC監督采配に見え隠れするので、そこを深掘りすると前回約束した。しかし、残念ながら調査中に栗山氏に関わる人との出逢いを見つけ、語りたくなってしまった。寄り道御免!!!その方は彼がスワローズ入団当時の2軍監督内藤博文氏である。内藤氏は太平洋戦争直後の巨人にテスト生第1号として入団、名手千葉茂氏からセカンドのレギュラーを獲得した。何となく栗山氏のキャリアとも類似する。入団当時の結果が出せずに苦しむ栗山氏に、内藤氏は「人とくらべるな」という言葉を投げかけた。当時はプロの世界であるから人と競争して生き残るものという風潮、そのなかで他者と自分を比べずに、今日よりも明日、少しずつでも自身の野球が上手くなればいいと指導する。そして、それを聞いた栗山氏にこれが全てだったと言わしめる。これだ、栗山氏の持つ他者の意見を柔軟に受け入れる特性と、遅すぎもせず早すぎもしない人との出逢いが、その後の展開に繋がっているであろうことが推測されたのである。次回からはWBC優勝までの奇跡について深掘りを始めることとしよう!
2026年開催のWBCまで残すところ1年6カ月ほど、2023年のWBC優勝の全体を振り返ることで始まった本企画であるが、これまで通り年2回のペースで投稿すると投稿機会はあと3回、どうなることか温かい目でみつめていただきたい。
1)三原ノート:栗山氏が中西氏に教えを乞うたときに渡された門外不出(?)の野球ノート。技術論にとどまらず指導法や組織マネジメントに言及されている。代表的な著作「栗山ノート」は三原ノートをオマージュしたものであろう。
(令和6年10月号)