山口 正康
往診は楽しい。
私は往診先で、患者さんの似顔絵を描いたり、ハモニカを吹いたりします。似顔絵が出来上がると、思わず笑いがおこり、周りもみんな、ニコニコします。
今日も、スケッチして、ハモニカを吹いたら、家族に拍手していただきました。
調子に乗って、何曲か吹いてみました。
すると、終末期の認知症の方が、ニコッと笑ったように見えました。とっても、嬉しかったです。
看取りの往診では、似顔絵を描きながら、伸びた白髪、深く刻まれた皺や表情で、その方の人生が鮮やかに浮かんできます。
「あ~、苦労なさったのだなあ・・・」
「最期まで幸せに過ごされているなあ。」
「あなたは、とってもハンサムですねぇ。」
スケッチには、過ごされている部屋や、窓から見える風景や、隣で見守る優しい家族の顔も描き込みます。
最近は、亡くなった後に、ご家族に手渡す「死亡診断書」とともに、似顔絵が描かれた「人生の卒業証書」も手渡します。
ハモニカの音色は、心を和ませてくれます。
「ふるさと」や「夕焼け小焼け」など、童謡を吹くと、目に涙をためて喜んでくれます。「寅さんのテーマ曲」は、とっても懐かしい表情を見せてくれます。
ご家族も、ハモニカを持ち出してきて、一緒に合奏することもあります。とても賑やかな演奏会になります。
似顔絵もハモニカも、今生きていることの喜びを、笑いや音色で、お互いに感じ合える優しい時間を生み出してくれます。
在宅で過ごされる患者さんは、不安や寂しさが膨らんで、辛くなることがいっぱいありますが、いつでも「大丈夫だよ」と、絵や音楽で励まし続ける訪問医でありたいと思います。
往診は、本当に楽しい!