新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター
特任准教授 本多 忠幸
令和6年8月に10回目の日本外傷初期診療(JATEC)新潟コースを開催しましたことを新潟市医師会会員の皆様にご報告いたします。インバウンドもしくは朱鷺メッセイベントのためかホテル代高騰と満室状況の中で、初めての真夏開催の新潟コースとなりました。受講者は勿論、インストラクターの新潟市内宿泊が危ぶまれましたが、なんとか無事修了しました。本コースは平成25年より新潟市医師会のご支援のもと開催しております。
JATECとは、Japan Advanced Trauma Evaluation & Careの略で外傷初期診療を学ぶための講義と実習のコースです。『改訂第6版外傷初期診療ガイドライン JATEC』に準拠して様々な重症外傷症例を想定した問題解決型の研修コースで模擬診療やシミュレーター人形を用いた実習を行います。外傷患者を診療する機会のある医師を対象とし2日間にわたって行われます。1日目は「ショック」「頭部外傷」「骨盤外傷」「胸部外傷」「Trauma Imaging(外傷症例の画像評価)」をテーマにしたweb形式で講義が行われ、2日目は対面方式で行われます。対面方式では「外科的気道確保」「胸腔ドレナージ」「心嚢穿刺」「骨髄内輸液」といった手技の習得と、ケースシナリオによる模擬診療が行われます。受講者1人1人が外傷患者の診療と処置を実践し、最後に学習効果を判定するために筆記試験と実技試験をうけることになります。全国規模で展開しており、講師陣は臨床現場で外傷診療や救急医療に携わっている全国の救命救急センターや大学病院の医師が担っております。
新潟コースでは1日目を8月17日に、2日目を8月24日と25日に開催しました。JATECコース地方開催はその地域の外傷医療のボトムアップが目的の1つです。今回は初期研修医2年生を中心に新潟県からは17名の受講(定員32名)があり、皆さん優秀な成績で修了されました。新潟県の外傷診療の質の向上に微力ながら貢献できたと思います。
令和7年も引き続き新潟コースを開催いたします。昨年と同様に真夏の開催となります。8月16日にweb形式セミナー、8月23日および24日に対面式実習を行います。JATECコースのホームページ(https://www.jtcr-jatec.org/index_jatec.html)から申し込み、新潟コースの受付期間は6月16日から20日までとなっています。初期研修医2年以上で外傷診療に興味ある方はご応募ください。
コース開催においてはwebセミナー形式が導入されるなど、IT化がすすんでおります。世の流れとは言え老体にとっては開催準備に苦慮することが多々ありました。今回は救急医学教室(高次救命災害治療センター)の出内主基先生(現・厚生労働省)が主体的に担ってくれたことが大きな助けになりました。若い世代への引継ぎが始まっています。
新潟コースが開催できるのはひとえに新潟市医師会の皆様方のご理解とご支援のおかげです。心より感謝申し上げます。今後ともよろしくお願いします。