新潟市医師会

  • 新潟市内の医療機関を探す診療科から
    • 内科
    • 小児科
    • 整形外科
    • 皮膚科
    • 眼科
    • 外科
    • 耳鼻咽喉科
    • 産婦人科
    • 精神科
    • 脳神経外科
    • 泌尿器科
    • 脳神経内科
    • 心療内科
    • その他
  • 新潟市内の医療機関を探す地域別から
    地域から探す
    • 秋葉区
    • 北区
    • 江南区
    • 中央区
    • 西蒲区
    • 西区
    • 東区
    • 南区
  • 休日・夜間に病気になったら急患診療センター
  • カラダのこと考えてますか?病気と健康のあれこれ
  • 医師会について
  • 市民の皆様へ
  • 医療関係者の皆様へ
  • 会員の皆様へ
  • 入会申込

新潟市医師会報より

新潟市医師会

100年トマト~32年ぶりの往診~

山口 正康

通院していたKさんは、99歳になり体が思うように動かなくなり、往診を依頼された。

私が豊栄病院に勤めていた頃、Kさんの父親を往診し、看取ったことを思い出し、あわてて写真を探した。今から32年前、病院の訪問診療が始まり、往診記録の写真は、すぐに見つかった。写真には古い農家の居間のベッドに横たわり、にこやかに笑っているKさんの父親と、その脇で優しそうに介護しているKさんの妻(嫁)が写っていた。

あれから32年、今お宅はどうなっているのだろう…。世代を超えて、再び往診することへの感謝と緊張感を感じた。

どこまでも広がる水田の細い農道を通り抜けた集落の一角に、タイムスリップしたように、昔とまったく変わらず、その屋敷はあった。

Kさんは、あの時の父親と同じように、満面に笑みを浮かべ、握手してくれた。「よく来なさったねえ。本当に、ありがとう…最期までこの自宅で診てくださいね」

奥様も、優しい笑みを浮かべて迎えてくれた。

Kさんは、父親の後を継ぎ、トマト農家をされていた。Kさんの作るトマトは、有機農法で、地元では評判のトマト農家だ。勉強熱心なKさんは、医院の待合室でも、いつも熱心に農業の本を読んでいた。生来真面目で、農業一筋の生活であったが、95歳頃からは、足腰も弱ってきても、気丈に、ご夫婦でトマト栽培を続けていた。

しかし、今年の春に植えた苗は、異常気象のため無情にも次々と枯れていった。Kさんは動けなくなった体を悔やむでもなく、淡々と「自然には逆らえないねえ…」と話していた。

来年の2月で100歳になるKさんに、私は、「100歳になったら、収穫したトマトに「100年トマト」と名付けて、みんなでお祝いしよう!」と提案した。

ご夫婦は、大笑いして、顔を紅潮させて喜んだ。

手入れができなくなったトマトは、とうとう多くが枯れ、残っていた苗5株を頂き、医院の庭に移植した。どうか、実がなりますようにと願って。1か月後、Kさんの農地のトマトは全て枯れてしまったが、診療所の苗は、少しずつ育ち、往診の度に写真を見てもらい、育て方のアドバイスを受けた。

Kさんは、優しい奥さんや、息子さん、娘さんに見守られ、訪問看護師さんに励まされて、在宅の生活は穏やかに過ぎた。

Kさんが亡くなる3日前に、小さな青い実がなった。しかし、生前に実ったトマトを渡せなかった。看取りが終わった帰り道、悔しくて、涙が止まらなかった。

その後、青い実のトマトは奇跡的に赤く熟し、「100年トマト」のレッテルを貼って、奥さんに手渡しに行った。とても喜び、「来年は、私がまた頑張って作ってみますね」と語ってくれた。来年の今頃、赤く熟したたくさんの「100年トマト」を想像し、胸一杯になった。

Kさんの「トマト」も「いのち」も繋がっていく。

(令和7年10月号)

クリニックの庭のトマト

トマトシール

  • < シルバー音楽会、いよいよ開催!
  • 庭木の剪定 >
新潟市医師会報より
新潟市の素描画
  • 2025年度作品一覧
  • 2024年度作品一覧
  • 2023年度作品一覧
  • 2022年度作品一覧
  • 2021年度作品一覧
  • 2020年度作品一覧
  • 2019年度作品一覧
  • 2018年度作品一覧
  • 2017年度作品一覧
  • 2016年度作品一覧
  • 2015年度作品一覧
  • 2014年度作品一覧
  • 2013年度作品一覧
  • 2012年度作品一覧
  • 2011年度作品一覧
  • 2010年度作品一覧
  • 2009年度作品一覧
  • 2008年度作品一覧
  • 2007年度作品一覧
  • 2006年度作品一覧
  • 2005年度作品一覧
巻頭言
学術
特集
病気と健康のあれこれ
寄稿
開院の自己紹介
わたしの好きな店
マイライブラリィ
私の憩いのひととき
旭町キャンパスめぐり
病院だより
勤務医ツイート
Doctor's Café
理事のひとこと
新潟市一次救急医療施設の利用状況
あとがき
  • トップページへ
  • ホームページTOPへ戻る
  • このページの先頭へ
新潟市医師会事務局
〒950-0914 新潟市中央区紫竹山3丁目3番11号
TEL : 025-240-4131 FAX : 025-240-6760e-mail : niigatashi@niigata.med.or.jp
  • ご利用にあたって
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ
  • リンク
  • お問合せ
©2013 Medical Association of Niigata City.