佐藤 雄一郎
WBC次回大会は2026年3月5~17日に予定されている。プールBには、前回日本の前に立ちはだかったメキシコとアメリカが同居しており、もし勝ち進めば2023年と同じ「準決勝メキシコ、決勝アメリカ」という再現が起こるかもしれない、、そんな因縁を感じる。2023年大会の振り返り、5回シリーズの最後に栗山英樹監督の思想を通して、なぜ日本が勝てたのかを考えたい。栗山監督が示したのは、「勝つために正しいことをする」のではなく、「正しい生き方を貫けば、結果として勝利がついてくる」という逆転の発想だったように思う。つまり、彼にとって勝利は目的ではなく、信念の延長線上にある“副産物”なのだ。この「生き方」とは、技術や戦略以前に人を思いやり、感謝を忘れず、チームのために自分を律し、小さな努力を怠らない、という人としての在り方そのものを指す。その姿勢が積み重なることで、結果としてチームがまとまり、神が降りるような“何かが起こる”。栗山監督の言う「サムシンググレートが降りるまでやる」という言葉には、まさにその境地が込められている。彼の根底にあるのは「人が育てば組織は動く」という信念である。勝利よりもまず、選手一人ひとりが「私心を捨て、人のために尽くす」ことを重んじ、細部に宿る努力の積み重ねでチームに火を灯した。ベンチの選手も「これは俺のチーム」と自覚し、他人事でなく「自分事」として動く、その一体感が強さの根源だった。決勝で初めてバッテリーを組んだ中村捕手と大谷投手の起用も(一度も受けたことのない投手の球を初めて受ける時の不安たるや、、)常識を超えた信頼の象徴である。相性や経験を超え、互いを信じ抜く関係がチーム全体に広がっていた。大谷選手の名言、「憧れるのはやめましょう」という言葉には、メジャーの有名選手に対するだけではない、自軍のなかのスター選手に対して距離を詰め、心を通わせる大切さを喚起した言葉ともとれる。監督が命じるよりも、選手同士の声かけがチームを変える「小事が大事」なのである。栗山監督は「侍ジャパンの一員」ではなく「あなたが侍ジャパン」と選手に語りかけ、個々に責任と誇りを託した。ダルビッシュや大谷のように自律した選手たちがいたからこそ、監督は強制せず見守れた。その自由と信頼の空気が、初めて本気で挑んできた米国スター軍団をも打ち破る原動力となったと考えている。要するに、勝利とは「正しい生き方をした人々に訪れる祝福」であると考えよう。勝ち方ではなく生き方を貫いた先にこそ、真の強さと美しさがある。2023年の栄光を超え、次の侍たちはこの精神をどう継ぐか、そこに日本野球の未来がある。