佐々木 壽英
1.僕には鳥の言葉がわかる
鈴木俊貴氏は動物言語学という新しい領域を切り開き、日本動物行動学会賞や英国・動物行動研究協会から国際賞など多数の賞を受賞している。
鈴木氏は1983年東京都生まれ、シジュウカラの言語能力を発見し、2025年に著書『僕には鳥の言葉がわかる』を発行し、脚光を浴びている。
その研究は、主に軽井沢の国設「野鳥の森」で卒業論文と博士論文のために行ったものである。
その野鳥の森でシジュウカラを研究対象として、鳴き声の意味を聞き分ける研究を行った。
その結果、空にタカが現れたら「ヒヒヒ」、蛇を発見した時は「ジャージャー」、危険を知らせる時は「ピーッピ」と警戒音を発する。仲間に「集まれ」と呼びかけるときは「ヂヂヂヂ」と啼く。警戒して集まれは「ピーッピ・ヂヂヂヂ」と鳴き声を組み合わせて文を作ることも分かってきた。
「これが身近な自然からの新しい気づきを得るためのきっかけになればと願う」と述べている。
2.僕には白鳥の言葉がわからない
これまで長い間、白鳥を撮影してきた。撮影しながら白鳥を観察していると、白鳥が会話していると感じることが何度もあった。白鳥の啼き声を聞き分けたことがないので、みな同じように聞こえてしまい何を話しているか理解できない。
しかし、白鳥は、白鳥言葉で話し合っていると思っている。
a)飛び立ち
早朝、餌場へ向かってファミリーが飛び立つ時は、リーダーが先頭で声高に飛び立ちを促しながら始動を始める。全員の気持ちが一致すると飛び立つ。しかし、後続の1羽が乗り気でないと分かると、すぐに全員が飛び立ちを中止する。先頭で飛び立ち始めたリーダーは、最後列の飛びたくない白鳥の気持ちを何で感知するのであろうか。白鳥は、言葉で「止めた」と知らせるのであろうか。
1羽を残して飛び立つと、上空を一回りしてから残った白鳥の元へ舞い降りてくる。そして皆で何やら話している姿を目撃したことがある。
b)ご挨拶
北海道の屈斜路湖で撮影中に、白鳥の素晴らしい挨拶の場面を連続撮影することができた。2羽の白鳥が、お互いに頭を下げ合って挨拶をして、最後に一緒に深々と頭を下げて挨拶をした。人間にもなかなか出来ない挨拶であり、感動した。
シベリアからの長旅でお世話になった感謝の言葉を交わしていたのであろうか。
これからの旅も宜しくお願いしますと挨拶したのであろうか。
c)語らい
写真3は若き2年目の白鳥であろう、お互いに見つめ合って何を語っているのであろうか。
ハートマークが美しい。以心伝心で、お互いの気持ちは通じ合っているのであろうか。
d)激論
白鳥が餌場から帰ってきた時、羽を広げて声高に叫びあっているところを見かけることがある。
この写真4を見ると、10羽くらいの集団で何か意見の食い違いがあったのか、かなり高度な言葉を駆使して激論を戦わせているように見える。この後、乱闘になることもあるが、それも直ぐに納まって何事もなかったように和解する。
e)伝達
小さなグループには、おのずとリーダー役が登場するであろう。写真5は、村上の御幕場大池で撮影したもので、そのリーダーが立ち上がり、大きく羽ばたきながら大声で何か話している。
「明日は、少し遠いが美味しい落穂がある山北の田圃へ行くぞ」と伝達しているのかもしれない。皆がこの話を興味深く聴いているように見える。
f)北帰行だ
最後の写真6のタイトルは「お花見を終えて北帰行だ、整列」である。これも村上の御幕場大池で4月12日に撮影した写真である。
桜は満開。大池に集結した全ての白鳥が同じ方向を向いている。この時期になると、白鳥が全員同じ方向を向いて整列することが多くなる。
この集団の中に、シベリアまで全員を統括し率いていくリーダーがいる筈である。そのリーダーの号令で、北帰行に向けて準備のための訓練を行っているものと思われる。
この後、期待したがこの一団の一斉飛び立ちは無かった。先頭のファミリーから三々五々、近くの餌場へ向けて飛び立っていった。やはり飛び立ちの訓練であった。多分、この数日後に北帰行の一斉飛び立ちがあったものと思われる。
白鳥は確かに白鳥言葉で話し合っている。僕がその言葉を知らないだけである。

写真1 飛び立ち

写真2 ご挨拶

写真3 語らい

写真4 激論

写真5 伝達

写真6 お花見を終えて北帰行だ 整列
(令和4年8月号)