佐々木 壽英
秩父のポピー群生地へ2010年6月5日の午後到着した。翌朝、日の出の時間にこのポピーを撮影する予定であった。しかし、このポピーが咲く丘は西向き斜面であった。朝日に輝く広大なポピー群生写真のイメージは一瞬にして消え去ってしまった。
仕方なく、ここでの撮影を中止して奥日光の撮影に切り替えて、いろは坂経由で奥日光へ入ることにした。いろは坂は奥日光を目指す車が多く、ギヤの切り替えを繰り返しながら、何とか奥日光へ到着した。
トウゴクミツバツツジが満開の竜頭の滝を横目で見ながら上の公的駐車場へ向かった。素晴らしい写真を期待して、駐車場で撮影の準備をはじめていた。
その時突然、携帯が鳴った。外科の同級生のお通夜の知らせであった。出席しない訳にはいかない。そのまま新潟へ引き返し、2010年6月5日の夜7時のお通夜に何とか間に合った。
しかし、あの満開の素晴らしいトウゴクミツバツツジが頭から離れない。そこで、ラリーを経験し運転に自信のある写真仲間に頼み込み、写友4人でその日の真夜中に新潟を出発した。
3時頃、金精峠にさしかかった。峠のトンネルを越えた先に魔の直角カーブがある。注意しようと思った時には「キーキーキー」とタイヤ音を響かせながら直角カーブを何とか曲がり切っていた。ここが運転の腕の見せ所であったようであるが、少し肝を冷やした。
そして、4時前には竜頭の滝の上流部に到着していた。橋の上から眺めると、昨日の午後とは全く違ったブルーがかった色のトウゴクミツバツツジで、川霧が立ち込めた幻想的な景色であった。4人で川岸に降り、夢中になってミツバツツジを撮影した。川の流れを低速のシャッタースピードで表現しながら期待通りの撮影ができた。それが4時14分撮影の写真1である。
この湯川の流れの両側にトウゴクミツバツツジが咲き乱れており、段差のある流れの上流から茶屋の近くの竜頭の滝まで各所で撮影した。
写真2は滝下の茶屋から5時28分に撮影した有名な竜頭の滝である。
随筆「小田代ヶ原の貴婦人」の中で、奥日光は写真撮影の宝庫であると書いた。風景写真を撮る者にとって奥日光には多くの魅力的な撮影場所がある。
ここまで来れば、有名な華厳の滝を撮らないわけにはいかない。華厳の滝を撮影できる展望台へ向かった。
その展望台からは真正面に華厳の滝全体を見ることができ、28~300mmレンズで定番の滝を撮影した。
よく見ると、97メートル落下する滝の近くをイワツバメが高速で飛び回っていた。イワツバメを意識して100~400mmの望遠レンズに交換して、2000分の1秒の高速シャッタースピードで連続撮影を始めた。
高速連写をすると、落下する滝の水が一瞬停止し、様々な模様を形作ってくれた。
そのうち、滝の中央部に光が差し込んできた。そこを中心に撮っていた時、多くのイワツバメがこの光の中に集まって飛び遊んでいる姿を撮影することができた。それが写真3である。
初夏になると、中禅寺湖西岸の千手ヶ浜にはクリンソウの一大群生地が現れる。
千手ヶ浜行きバスで貴婦人を右手に見ながら進み、終点で降りると右側の松林の中にクリンソウの群生地がある。ここは知る人ぞ知る隠れた秘密の撮影場所である(写真4)。
この松林の中には小川が幾筋も流れ込んでおり、その小川の岸辺に咲くクリンソウを撮影して回るのも楽しい。
奥日光の戦場ケ原は名前の通り広大な草原で、ワタスゲやツツジの時期に訪れて撮影してきた(写真5)。晩秋の時期、戦場ヶ原に朝霧が立ちこめると幻想的な風景に一変する。
奥日光で撮影を終えての帰り道では、何時も湯ノ湖へ立ち寄ってみる。湯ノ湖はフライフィッシングの聖地であり、道路沿いの駐車場に車を止めてフライフィッシングの現場を撮影することができる(写真6)。これも奥日光撮影の楽しみの一つである。
ここに載せた写真は何れも初夏の写真である。秋に奥日光を訪れると、奥日光はまた別の顔を見せてくれる。
これら奥日光で撮影した写真70枚を厳選して、写真集『私の奥日光』を2020年5月に製作した。

写真1 トウゴクミツバツツジと川霧

写真2 竜頭の滝

写真3 華厳の滝に遊ぶイワツバメ

写真4 千手ヶ浜のクリンソウ群生地

写真5 ツツジ咲く戦場ヶ原

写真6 湯ノ湖でのフライフィッシング
(令和8年6月号)