荻荘 則幸
現在、指標として使用している人口10万人対医師数が医師の偏在の状況を十分反映していないとされている。この事は地域で実効性のある医師偏在対策を行う体制の構築に影響が出てきている。医師の偏在を測る指標の問題点は、いつなのか“時点”の設定とされている。人口10万人対医師数における課題は、住居地区の人口構成(性、年齢)、昼夜における患者の流出入、へき地等の地理的条件、医師の性別・年齢、入院・外来の機能、また診療科別の医師の状況等々が反映されていないことだといわれている。
今回、医師確保計画に基づく地域枠、地元出身者枠の設定、医師需給推計、医療計画と医師確保計画の見直しを総合的に勘案すると、2035年度末の医師確保計画の終了時点で状況を把握して2036年を医師偏在指標の設定時点としてはどうかという考え方が提出されている。2036年の試算では、二次医療圏で約24,000人、三次医療圏で約5,300人の医師が不足する。
医療圏ごとに算出された指標で、医師少数区域、また多数区域が設定される。この医療圏は都道府県が指定する。今後、この設定により医師偏在対策を自治体が新たな制度で開始することになる。特に、働く医師へのインセンティブとして少数区域での勤務経験が地域医療を担う病院での管理者になる条件となる可能性も考えられているらしい。また、各自治体が医学生に奨学金を貸与する地域枠、またそれとは異なる地元出身者枠についても、自治体が大学に対して創設または増員を要請できる。この際に要件としては、地域医療対策協議会の協議を経ることになっている。また、医師少数都道府県がその都道府県内の大学のみで医師不足分を地元出身者枠数のみで充足することができない場合、当該自治体内の大学に地域枠設置を要件とした臨時定員の増員、また医師多数地域の他の自治体の大学に県をまたぐ地域枠の創設または増員を要請できるとする案も出されている。
これらの対策は、病院のみならず地域の診療所にも少なからぬ影響を及ぼしてくる。将来の外来診療科ごとの需給調査も医師偏在対策と同時に大切になってくる。
現在、ある疾患が複数の外来科で診療されることなく追跡できる科は産科(特に分娩)、そして、15歳未満の患者を扱う小児科とされ、これらの科をまず指標に外来診療科別の需給調査を行うことが検討されている。これら診療科別の需給結果から地域の外来機能としての必要な診療科が算出されてくる。
厚生労働省によると、議員の意見として、医師を一人前にするには概ね1億円(?)かかるから、ある程度、国としても医師が働く診療科、地域を強制力をもって指定したらどうかという意見もあるという。また、地域の外来機能を可視化して、新規開業の情報提供を行うとしている。さらに、外来医療を考える協議の場を設定するという考えも出ている。
今後、自由診療、自由開業制も難しい時代になってくるのか…?
(平成31年5月号)