八木澤 久美子
みなさま、こんにちは。今期から理事をつとめさせていただいております。主たる仕事は女性医師委員会のまとめ役(雑用係)です。事の始まりは6年前、前理事の白柏麻子先生からのお誘いでした。藤田前医師会長先生の「うち(新潟市医師会)も女性医師の会を作りましょう」の一言からだったそうです。その当時すでに多くの郡市医師会で女性医師委員会が立ち上がっていました。そもそも私は女性だから男性だからという性別でくくる考え方がとても嫌いです。医者なんだからどんな条件でもきちんと仕事するべきだ。と考えていました。ですが、白柏先生や委員会の皆さんとの話し合いや勉強を続けていくうちに、これはそんな類のことではない、私の考え方はずれてる、もっと大変なことなのだとわかってきました。
まずは歴史をひも解きましょう。学士会の会員名簿によれば、新潟医専、新潟医科大学は昭和19年卒業あたりからぽつりぽつりと女子医学生が入学してきていました。その後女子学生は全体の1割くらいに増え、平成になり2割、平成終了くらいで3割へと増えてきています。女性の仕事として医師が選択されてきているということで、喜ばしいことと思われます。さて、これに関して困ることは何でしょう。女性には男性にできない妊娠・出産というイベントがあります。その間は休業しなければなりません。私の時は産前6週産後8週計14週、この間の穴埋めをしてくれるのは同僚の医師たちでした。一人二人なら医局内で人員配備で何とかなるでしょうが、同じ医局内でもし10人15人の医師が同時に休業したらどうなるでしょうか。短期間でも人手不足は所属する病院や医局にとって深刻な問題です。それから、どうひいき目に見ても育児の負担は女性側に重いように感じます。これは女性医師個人個人の頑張りで何とかなるという問題ではもはやありません。体制そのものを変えていかなければならない時に来ています。女性医師が長く幸せに仕事を続けていくことができるような環境づくりが必要なのです。それは医療そのものを豊かなものにしていくことになるでしょう。
さて、女性の潜在能力の高さについて触れたいと思います。男性の持つ決断力、瞬発力、筋力の強さ、集中力は私も憧れます。が、女性の持つしなやかさ、明るさ、愛らしさ、優しさ、粘り強さ、根気強さ、細部に目が行き届く能力は優れており各職場で強みとなります。ぜひ、この強みをいかし活躍し続けていってほしいと思います。
最後に仕事の多様性について提言したいと思います。仕事の選択肢、やり方は無限にあります。私は大学を卒業したら、そのまま大学医局に所属してずっと働くものだと思い込んでいました。このため家にいない時間が長く家族に多大な負担を与えてきました。選択肢がたくさんあるということを誰も教えてくれなかったのです。もしわかっていたら人生の展開が変わっていたと思います。基本的に自分の人生は自分が思ったように展開していきます。結婚するしない、出産するしない、仕事を辞める続ける、選択枝は多枝、どれも正解。一度しかない人生、自分でプロデュースし、しなやかに自分の能力を活かしていってほしいと思います。仕事を辞めたくなった時、復帰したくなった時、スムーズにものごとが運びますようバックアップする体制づくりを微力ながら尽力したいと思う今日このごろです。
(令和3年1月号)