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新潟市医師会報より

新潟市医師会

スマホ脳

佐藤 勇

昨年1月に香川県ネット・ゲーム依存症対策条例が提出され4月1日に施行された。日本初のゲーム依存症に特化した条例である。1月にニュースを聞いて、小児科医会などが動いているのかと思い、香川の友人にたずねてみた。しかし、小児科医会としてメディア問題に注力しているが、今回の条例には直接関わっていないということだった。内実は、それまで生活習慣改善に対するキャンペーン報道を重ねてきた四国新聞が、ゲーム依存がWHOでも取り上げられていることに着目して、議員連盟・議長とタッグを組んで施行されたようだ。子どもたちの生活への介入を、条例でおこなうことの是非は議論があるが、注目度は高かった。その後、いったんは子どもたちのゲーム利用時間も減少に転じたが、新型コロナに対する緊急事態宣言の発令などにより増加傾向となり、今後の議会での対応が注目される。

施行後の議論の中で、個人の自己決定権や条例制定の過程の問題点が指摘されているが、政治的議論は別にして、賛否は、IT分野の育成や教育の改革をもとめる立場と、ネットによる子どもたちの変化を感じ取っている立場とで二分している。「ゲーム障害」がICD-11に加えられることになった。小児科医としては遅きに失するとさえ思うのだが、ICDにはDSMのように暫定的な分類がなく、そのため「障害」と認定することのエビデンスが問題になったとおもわれる。今回の条例に関する議論でも、必要なのは科学的根拠であり、医学に求められている課題であると感じる。

「スティーブ・ジョブズは、我が子になぜiPadを触らせなかったか?」という有名な逸話を帯にかけた新潮新書『スマホ脳』は、ベストセラーとなり書店で山積みされている。著者の精神科医アンディッシュ・ハンセン氏は、スマホは「最新のドラッグ」と言い、その依存性を指摘している。オンライン授業が増え、デジタル教科書の導入が進む中で、「タブレット末端での学習効果は紙の教科書より著しく劣る」と明言している。これらは多くの科学的データーで証明されている。本誌でもマイライブラリィのコーナーで紹介した『ペーパーレス時代の紙の価値を知る』(2020年4月号)では、ディスプレーでの学習と紙での読み書き学習の効果の大きな差について報告されている。この差は、脳の発達過程にある小児ほど大きな差になるといわれている。

スマホはわずか10年で生活を一変させた。私たちにとっても学会の運営すらスマホなしではできない。脳が数万年前から変わっていないことと対照的だ。ハンセン氏の母国であるスウェーデンでは、やみくもに取り入れて、子どもたちの学習効果が低下したという。私たちは、コロナ禍でスマホをはじめとしたWeb利用の利点を享受したが、その光と影をうまく扱う技術が必要になってきた。

任天堂から研究費をもらおうとはじめたファミコンの効果検証で、予想に反して脳科学的にゲームの危険性を指摘することになった東北大学の川島隆太教授は、以前の著書『スマホが学力を破壊する』でスマホの学習に対するマイナス効果を指摘し、さらにその深刻な分析結果を『スマホが脳を破壊する』として電子書籍で出版した。子ども達の活字離れに危機感を抱いている知人が、その出版をすぐに知らせてくれた。スマホの問題を電子書籍で公開するという、一見矛盾を感じる手法だが、それだけ緊急性を感じ、まとめたデーターを早急に出版したのではないかと知人は推測している。医学でも新型コロナの論文などは、ネット上の検索が早いので合点がゆく。前著では、スマホを持つだけで学力が低下するという事実を統計的に示したが、本書では、画像解析によって本来増加するはずの小児期から青年期の大脳灰白質が、インターネット習慣によって増加が遅れることに警鐘を鳴らしている。このことから、スマホが破壊しているのは学力ではなく脳そのものだと指摘する。

同様の画像解析は、虐待の領域における研究でも、その有用性は科学的に検証されている。福井大学の友田教授による報告では、虐待のみならず、子どもに対する暴言だけでも、子どもの聴覚野が萎縮するというデーターが示され、厚労省の家庭向け子育て支援のパンフレット「愛の鞭ゼロ作戦」にも引用されている。子どもの人権意識が低下している日本の現状と、子どもを親の付属物と感じる日本人の伝統的子育て感に対する警鐘として、科学的データーが引用されている。

新潟市では「GIGAスクール構想」として、巨額の予算を投入して、子どもたちに一人1台のタブレットを配布するという。前述した様々な検討がされている中で、わずか10数年の歴史しかもたない新しい技術に、未来ある子ども達を託してしまう。これまで、インターネットの弊害を指摘し、ゲーム時間の制限を子どもたちに訴えていた現場の先生方は、どのように感じられているのだろうか。保護者たちから反対の署名運動が始まるような教育「改革」が、誰のためのものなのかと考えざるを得ない。

(令和3年4月号)

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