高橋 英明
小学校の3年生の時、新潟国体が開催され、我が家には奈良県から馬術の選手が馬とともに民泊した。馬は我が家の砂地の庭に繋がれた。強烈な経験のはずだが、それ以上は思い出せない。というのも、国体後新潟地震があったので、さらなるインパクトの強い記憶に打ち消されたのだろう。4ヶ月後には東京オリンピックが開催され、有明台小学校には各クラスにテレビが設置された。それぞれのクラスでテレビを見て応援した記憶がある。1964年の出来事。
TOKYO2020は、新型コロナ感染症の流行により1年延期され、様々な議論の中、本年7月23日開催された。パブリックビューイングや飲食店における応援はしない、選手やコーチ、関係者を大きな泡で囲むようにして一般社会から隔離するというバブル方式を採用、空港検疫や水際対策をより厳しくするための空港リエゾン、大会ガイドラインやIOCルールブックなどの対策がなされての無観客開催となった。
デルタ株による首都圏を中心とした新型コロナ感染の第5波とも思われる感染の増加傾向を示している時期と重なった。若い世代からは「自粛疲れ」、飲食店関係者からは「またかの休業要請」の声がある。
「楽観バイアス」とはWeblio辞書で調べると、人間心理に関する用語で、物事を自身にとって都合よく解釈すること、とある。NHKニュースでは筑波大学の臨床心理学教授の原田先生が、「オリンピックの開催で、コロナを軽くみてしまう『楽観バイアス』が強まり、緊急事態宣言が意味をなさなくなってきている」として、「五輪のお祭りムードの一方で緊急事態宣言という矛盾するメッセージが出ているが、自分が聞きたいほうだけを取り入れてしまうため『コロナはたいしたことがない』と軽くみてしまう」と分析されている。
私は家で静かにダイジェストの五輪競技を見ているが、コロナのニュースの方が気になってしまっている。パンデミックにおいては、人間の心理や行動を状況に合わせて把握するということが我々医療者にとっても重要な事柄であることを学んだ2021年夏であった。