横田 樹也
スマートシティとは、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域と定義されています。
多くの都市、地域において、まちづくりを進める上で、人口減少、高齢化、災害多発、感染症など、様々な社会課題に直面し、今後ますますこれが深刻化するものと危惧されています。一方、我が国は、この数年の「コロナ禍」により、思いがけず、新技術や各種のデータを活用したデジタル化の取り組みが進んだのではないかと言われています。こういった潮流により、今後、従来の発想にない、システムの効率化やサービス提供を可能にし、各種の都市、地域の課題が解決できるのではないかと期待されています。
政府は、2018年6月に閣議決定された「統合イノベーション戦略2019」において、スマートシティを、情報社会にAIやIoTを加えた、より生活しやすい社会と定義している「Society5.0」の先行的な実現の姿として位置づけています。
内閣府と文部科学省、経済産業省、国土交通省が中心となり、こういった先進事業を進めるにあたり、スマートシティの取り組みを官民連携で加速するため、企業、大学・研究機関、地方公共団体、関係府省等を会員とする「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を発足し、この枠組みで、関係府省が連携し、スマートシティ関連事業を実施する会員に対して支援を行うこととしました。
新潟市は2019年の開港150周年を契機に、「新潟都心の都市デザイン」を策定し、計画的にまちづくりに取り組んでいくこととしました。2020年1月、公民が連携し、市の地域課題の解決を図るため、ICT等の技術を活用し、にぎわいのある持続可能な都市(スマートシティ)を目指すことを目的に、新潟市スマートシティ協議会(以下、「協議会」という)を設置しました。この事業は2021年に国土交通省が公募したスマートシティ関連事業に選定されました。協議会の活動は新潟駅前、繁華街の万代、旧市街の古町を結ぶ都心軸(約2km)沿線エリアを中心とし、公民連携でまちなかの活性化を図ることとし、このエリアについて親しみやすい呼称で「にいがた2km(二キロ)」として発信することとしました。これらの区域には、良い地域ストックがあるにもかかわらず、「コロナ禍」以前から来街者が減少傾向にあります。こういった実情に対して、新潟市は「来街者減少による賑わい低下」を課題に設定し、産官学民連携による自発的・独創的な様々な取組みの導入を促進し、地域ストックを活性化させて「来街者数の増加」、「回遊性の向上」による賑わい再生を図るための取組みを進めることにしました。協議会は、様々な産学官の団体により構成され、協議会構成員に対する実行計画等の情報共有を行うとともに、構成員の企画提案をもとにプロジェクトを発足し取り組みを進めているところです。
新潟市医師会は、新潟市が目指すスマートシティ創出の中で、これまで当会が行ってきた事業で得てきた経験やデータをもとに、特に「ヘルスケア」分野に関わる、様々な助言や提案をできるのではないかと考え、2021年10月に協議会に入会することとしました。当会としましては、新潟市と新潟市医師会がこれまで集積した市民の健康データをもとに、ICT技術等を活用して、市民に対して健康の啓発を行うとともに、平時の医療提供時のみならず、救急時や災害時にも、広く役立てるシステムを作ることができないかと検討を行っているところです。そして、将来的に、このように作られたヘルスケアシステムにより、市民にとって、安心で住みやすい新潟のまちづくりに貢献できるのではないかと考えています。
(令和4年8月号)