八木澤 久美子
前回、「理事のひとこと」の欄に女性医師委員会のことを書かせていただきました。その続きの話です。女性医師委員会担当理事として活動していく中でいくつか課題があり、その一つに名称変更をどうするかという問題があります。「女性医師委員会」という名称はもう古い、「ダイバーシティ推進委員会」はどうか、という意見があります。また一方で「女性医師」という言葉が入る方がいいという意見もあります。これは私が担当している間に解決しなければならない課題と考えています。最近聞かれるようになったダイバーシティ・多様性という言葉は人種、宗教、性別、障がいの有無、価値観、ライフスタイルなどさまざまな違いを持った人々が組織や集団において共存している状態をいうのだそうで、アメリカで国内のマイノリティーや女性が差別のない採用活動、社会での公平な処遇を実現するための運動から広まったのだそうです。これだけではよく理解できず、私の頭の中は、未だ、はてなマークが消えません。さていくつかの学会ではすでに取り組んでいます。日本循環器学会は「さらなる多様性─世代、職種、留学生、他学会など─が交流し互いの理解、進歩を考える場を設け、大きく発展していくために活動します。」とあり、研究を進めたい意図がありそうです。日本泌尿器科学会は、「女性泌尿器科医の会」から「男女共同参画委員会」を経て「ダイバーシティ推進委員会」と名称変更しています。女性の泌尿器科医が増えてきて(とはいっても5.4%だそう)そのキャリア支援が主目的のようです。日本眼科学会も「男女共同参画推進委員会」から「ダイバーシティ推進委員会」と名称変更しました。本年、日本医学会では医学会史上初のダイバーシティ推進委員会が設置され、その会長は眼科医の大野京子先生で、インタビューの中で、眼科医は女性医師が多いが重要な意思決定をする場に女性医師が少ないのが現状だと言っておられました。さて当会はどうしましょう。多くの会員の方々のご意見をいただきたいと思います。私なんぞはまだ言葉の意味をもんもんと考えている段階でおはずかしい限りです。
私ごとですが、高校生の頃、なぜ自分は男に生まれてこなかったのだろう、そもそも男女の区別は必要あるのか、と悩んだ時期がありました。この時に読んだ、大庭みな子さんの『ふなくい虫』という小説に衝撃を受けました。ふなくい虫は貝の一種で雌雄異体であるが性転換もする。この世の中には性転換する生物も雌雄同体の生物も存在しているという事実をこの時初めて知ったのです。なぜかこれで気持ちが軽くなりました。動物植物とも種の保存のため雌雄は必要である。その当時の自分が出した答えです。ヒトでは男女問わず女性ホルモン男性ホルモンが体内にあり、女性は閉経後女性ホルモンは減少、年齢70歳ころより男女差がなくなってきます。性別の差ってそんなもんか。と今は考えています。
さて最後に女性医師の皆さんが一度しかない自分の人生、自らの力で切り開き、プロデュースし、しなやかに自分の能力を活かしてそれぞれに活躍してほしい。家庭の面でも。仕事の面でもハッピーになってもらいたい。それが私の一貫した願いです。このために今後も微力ながら尽力したいと思っております。
(令和5年5月号)