横田 樹也
SWANネットをご存知でしょうか?SWANネットは、平成29年4月、新潟市において、基金を利用して、市内の約350の医療、介護事業所に導入された在宅医療・介護連係情報共有システムです。本格運用が開始され6年が経過したところですが、現在は約250施設が参加しています。このうち医療機関では、19病院、41医科診療所が参加していますが、参加施設数は決して多くなく、参加していても、約半数の施設は全く利用していないのが現状です。SWANネットを積極的に利用し、多施設間で連携を行う施設にはたいへん好評を得ていますが、利用実績がない施設にはメリットを感じてもらえず、結局、費用対効果がないなどの理由で脱会してしまう例も少なくなく、日々の施設間の連携において、実際にSWANネットを活用してもらうことで、そのメリットを実感してもらうことが重要と考えています。
私自身は、本格運用が開始された平成29年に、SWANネットを導入することとしました。導入時には、普段、患者連携をしている薬局、訪問看護ステーション、介護施設などにも声をかけ、同時に参加してもらいましたが、現在では、SWANネットは、これらの施設との連携では欠かせないツールとなっています。SWANネットは医療・介護関係者が日々の患者情報を共有するヘルスケアSNSで、参加者が経時的に記録を書き込み、また、参照できるものです。私の場合、普段の診療の空き時間に、電子カルテからSWANネットに直接ログインして、連携先の書き込みを確認することで、最新の患者情報を知ることに加え、コメントや指示を書き込んでいます。また、電子カルテとSWANネット間で、記載内容をそれぞれにコピペすることで、転記することなく記録を残すことも可能です。こういった作業は、診療の合間の数分で行うことができ、あまり負担感は感じません。また、各種の書類作成にも利用できます。登録患者で、訪問看護指示書や介護保険の意見書なども一度入力していれば、新たな作成時にも変更点だけを書き換えてプリントすることもできますし、訪問看護指示書に関しては、SWANネットを通して、連携先の訪問看護ステーションへ直接送ることもできます。
コロナ禍において、利用されたシステムで、SWANネットMEETがあります。Zoomと同様のオンライン会議システムですが、これは会議の主催者がSWANネット上に、会議を設定して、参加者を決定すれば、連携施設のみならず、SWANネットに参加していない施設に対しても、会議のURLとパスコードをメールで送ることで会議に参加してもらうことができます。これは、退院前カンファンレスやサービス担当者会議での利用を想定していますが、私の場合は、コロナ禍で対面制限される中、訪問看護師との患者の情報交換で利用しました。
SWANネットMEETのシステムは、会議だけでなく、オンライン診療にも利用することができます。医師がSWANネットMEETでオンライン診療(会議)を設定して、患者宅に設定URLとパスコードを送り、設定日時にオンライン診療を行うものです。私自身、実際にオンライン診療で利用してみましたが、接続状況に問題なく、画質と音質とも良好で、SWANネットはオンライン診療のシステムとしても十分に利用できるものと実感しました。
現在、病院や診療所においてSWANネットを利用している施設は決して多くありません。これまでの利用例を確認してみると、医師が率先してSWANネットを使うことで、患者を連携するその他の医療、介護施設でも、参加頻度が増えることがわかっています。また、多くの多職種が参加し、より多くの患者さんを連携することで、いっそう利便性も向上するものと考えられます。こういった理由からも、一人でも多くの医師がSWANネットへ参加して、それを活用していただく結果として、SWANネットの利用が広がり、その価値が高まるのではないかと期待しています。SWANネットに参加していても、ほとんど使用していない先生は、ぜひ、一度、SWANネットへログインし、一人でも患者を登録することで、多職種と連携していただければ、そのメリットを実感できるのではないかと思います。また、SWANネットに参加されていない先生は、「新潟市在宅医療・介護連携センター」のホームページ内の「SWANネットのご紹介」をご覧いただきたいと思います。そして、少しでも興味を持たれましたら、また、何かわからないことなどがありましたら、お気軽に、新潟市医師会(地域医療推進室)へご連絡、ご相談をしていただきますようお願いします。
新潟市在宅医療・介護連携センターHP/SWANネットのご紹介
https://www.niigata-rc.org/swannet/
(令和5年12月号)