荻荘 則幸
ハローワークに看護師等の求人募集を申し込み、掲載されると、東京を中心とした職業紹介事業者(人材紹介会社)から“看護師紹介します”のFAXが山のように届きます。厚労省の以前(平成25年)の調査でも雇用している看護師の紹介会社からの紹介率は約40%、(医師は約30%)に迫っていました。紹介会社が扱う職種は医師、看護師、保育士、介護士、ケアマネ、レントゲン技師、リハビリスタッフ(PT、OT、ST)、検査技師…等々、ほとんど全ての職種を網羅しています。最近の介護業界では、なんと無資格の人も紹介してきます。つまり、やる気があるので雇用先で教育して資格を取らせなさいということです。ちなみに、紹介手数料は、推定年俸の20~35%が多いようです。紹介会社の手数料収入は過去10年間で約10倍に増大しているといわれています。
この有料職業紹介会社の手数料の制度には、職業安定法の規制があります。①受付手数料(上限710円)と②紹介手数料があり、さらに、この②の中には紹介会社が手数料割合を自由に決められる“届出制手数料”があります。当然、多くの紹介会社は②の届け出制手数料を採用しています。この手数料の割合が前記の20~35%となっています。つまり、推定年俸が500万円とすると手数料は100万円以上となります。
ここで手数料100万円はどこから出ているのか?また、紹介された人材の適性や能力がこの手数料に見合っているのか?という疑問があります。
求人先が病院、診療所、福祉施設とすると、この手数料の原資は税金、保険料が多くを占めています。つまり、国民の負担となっています。
この手数料が紹介されてくる求職者の適正な教育、研修に使われることは少なく、紹介会社のネット上の広告費、一般ブロガーを含む、メディア運営者にも幾らか支払われています。つまり、求職者が登録をすると運営者に1人あたり、何万円かの報酬が支払われるらしいです。(アフィリエイトシステム)こうして紹介料は、高額になるといわれています。
高額な手数料を支払っても優秀な人材と求人先がうまくマッチすれば、いいですが…
しかしここで注意すべき事があります。まず求人先が紹介会社と契約を結んでから紹介会社から連絡があり、求職者との面接になります。この契約書には求職者に、求人先から推定年俸の何%が手数料で紹介会社に支払われるという事を知らせる交付義務があります。つまり、紹介手数料がいくら、また求職者が就職後に早期に辞めた場合の返戻金制度についての求職者に対しての明示が必要です。また、紹介会社からの求職者の紹介後は、ある一定期間は紹介会社を通さない求職者との直接接触は禁止されます。(オーナーシップ条項)ここで高額の紹介手数料の内容はどうなっているのか疑問です。東京の紹介会社は求人者と求職会社の面接には、まず同席せず、電話のみの段取りをします。また、求職者が適格な能力を持っているかどうか、直接、会わずにきちんと精査しているか甚だ疑問です。求人条件との整合性が求職会社には求められます。
今後、医師会も医療機関に人材を積極的に紹介する制度を構築することも考えられます。
このままでは医療機関の存続の危機です。
(令和6年5月号)