山崎 昭義
人口減少に伴い、当然迎える人材不足。もう、各方面で始まっている。身近なところでは、タクシー、代行、バス、輸送トラック、などのあらゆる運転手。建築、道路などの工事作業員。公務員、特に、消防隊員、警察官、教師、など。コロナ禍、働き方改革と重なり、さらに加速している。能登半島地震のがれきは、道路の復旧工事が進まないために、半年経っても撤去されないまま。やはり、大阪万博は、延期すべきであったのではなかろうか。それに大都市圏の外資系大型ホテルの建設ラッシュ、などの需要増加が拍車をかける。さらに、日本海を挟んで専制軍事国家に囲まれているという、変え難い地政学的な不安定性。国防の需要も高まっている中で、軍事的機密性から明らかにはできないのであろうが、自衛隊員数の減少と高齢化は、徴兵制を持たない日本という国家の存亡にかかわる大問題である。一方で、引きこもりが、全国で15~64歳までの2%にあたる推計146万人(内閣府 2022年)と増加してきている。我々、医療・福祉に目を向ければ、医師数は不足というより、地域・診療科の偏在、医療スタッフの中では、特に看護師、薬剤師、介護士の不足が著しい。ハローワークよりも、人材派遣会社を通しての就職希望により、年俸の2~3割を支払う羽目に。さらに、すべての医療従事者が、リスクの少ない、責任の軽い方向にどんどん流れて行っている。例えば、医師は、女性の比率が増し、外科系が不足しているところに、自由診療の分野への流出も増えている。当然、医師の給与体系も、ハイリスクには、ハイリターンで応えてあげないと、外科系には誰も行かなくなる。さらに、国際協力開発機構(OECD)の調査によると、2022年における38加盟国の平均年間賃金は約582万円のところ、日本の平均賃金は約452万円とOECD加盟国平均を130万円ほど下回っており、38カ国中25位と、韓国よりも低かった。最近の為替相場における急激な円安も加わり、これでは人材の海外流出も加速し、人手不足は拍車がかかってしまう。
日本創生会議(2014)によると、そもそも2040年には、全国896の市区町村49.8%が消滅するとの試算もある。消滅可能性都市とは、2010年~2040年で、20歳~39歳の若年女性人口が5割以下に減少する市区町村である。新潟県では、60%が消滅することになっている。今からわずか16年後である。さらに、主要都市人口が全人口に占める割合は、東京(一都三県)は、1950年では、ロンドン、パリと同様に15%程度であったのが、2010年では、ロンドン、パリは不変であるのに、東京だけ、倍の30%近くまで跳ね上がっている。特に、女性の晩婚化、晩産化による少子化は著しい。地方では、人口流出と低出生率、東京圏は、人口流入と超低出生率。さらに、2040年までに、特に大都市圏において高齢化が一挙に進む。東京圏では、医療・介護サービスが大幅に不足、逆に地方はサービスが過剰に。そうすると、あふれた高齢者の受け入れ先が、東京圏では見つからず、地方で探すことを強いられる。現実に、500km離れた青森県まで行かないと入居施設がないことが、先日もNHKで報道されていた。これで、地震などの自然災害に対する総合的なリスクが世界中で最も高い東京・横浜圏(国土交通省 2019年)が直撃されれば、日本全体が一気に沈没しかねない。そういう意味でのリスク分散・管理も大切である。何としても地方創生が必要である。それと同時に、地方分散、例えば、サイズが似ているドイツの様に、思い切って、各企業本社や中央官庁も、どんどん地方への移転を政府が推奨する。そして、地方学生のインターンシップをもっと盛んにして、地域に残りやすくする、などの方策も大切であろう。
(令和6年8月号)