江部 和人
2015年から開始された地域医療構想は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年までの医療計画の一部で、2025年の医療需要を踏まえた病床数の必要量を定めた上で、病床機能報告(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)、地域医療構想調整会議における協議、地域医療介護総合確保基金の活用、都道府県知事の権限等を通じて、病床の機能分化・連携の取組が進められてきた。とりわけ、病床数および病床機能(急性期が多く、回復期が少ない)を目標値に収束させることが主体であり、コロナ禍による会議の中断はあったものの、COVID-19による受診、入院動向の変容、想定以上の少子高齢化の進展、診療報酬改定等による政策誘導により概ね目標に達した。しかし、病床数の議論が中心となり、「将来のあるべき医療提供体制の実現に向けた議論」、「外来医療、在宅医療等の地域の医療提供体制全体の議論」がなされていない、などの課題が残った。
新たな地域医療構想は、病床の機能分化及び連携推進を主眼とした現行の構想から、2040年頃を見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるよう、入院のみならず、外来及び在宅医療、医療・介護連携並びに人材確保等を含め、地域の医療提供体制全体の構想として検討されてきた。今後、医療法等関連法の改正後、2025年度中に国において関係ガイドラインも作成され、2026年度に都道府県で新たな地域医療構想が策定され、2027年度以降その取組が進められる見込みである。また、新たな地域医療構想を従来の医療計画の上位概念として規定し、構想に即して医療計画を定めることとされている。
2040年やその先を見据えて、高齢者救急・在宅医療の需要が増加する中、地域の実情に応じて、「治す医療」を担う医療機関と「治し支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、医療機関の連携・再編・集約化を推進する。このため、新たな地域医療構想を通じて、病床の機能分化・連携に加え、地域ごとの医療機関機能の報告制度が創設される(①高齢者救急・地域急性期機能 ②在宅医療等連携機能 ③急性期拠点機能 ④専門等機能 ⑤医育及び広域診療機能)。
一方、病床の機能区分(現行:高度急性期、急性期、回復期、慢性期)については、2040年に向けて増加する高齢者救急等の受け皿として、急性期と回復期の機能をあわせもつことが重要となる等を踏まえ、これまでの【回復期機能】を、【包括期機能】(高齢者救急等を受け入れ、入院早期からの治療とともに、リハビリテーション・栄養・口腔管理の一体的取組を推進し、早期の在宅復帰を包括的に提供する機能)へ変更された。
2040年頃に向けて、人口動態の変化に伴い、医療の需要や提供体制等の地域差が拡大し、地域ごとに将来を見据えた取組が求められる。新たな地域医療構想を通じて、国、都道府県、市町村、医療関係者、介護関係者、保険者、住民の協働のもと、中長期的に質の高い効率的な医療提供体制が確保されることが期待される。
在宅医療に関しては、高齢化に伴い需要が増加すると考えられる。新潟県は医師不足の観点から介護施設の整備が図られてきた経緯がある。しかし、団塊の世代が高齢化に向かう局面、また国が進めている医療提供体制では、在宅、施設での在宅医療、ケアは現在より50%ほど増加することが予想されている。地域包括ケアの観点、人生の最終段階での生き方、逝き方に医療従事者とし対応するために、医療・介護連携、多職種協働体制、医療DX等さらに推進する必要があると考える。