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新潟市医師会報より

新潟市医師会

AI、ロボット、そして人間

山崎 昭義

昨今、すさまじいAIブームである。画像解析、作文(誰々風とかも可能)、検索など、蓄積した情報を学習し、もっともらしい解答を導き出してくれる。医学、医療面でも、人間の頭脳の代わりとして、大いに助かりそうである。これは、多層学習の結果、予想される答えを導き出す、というものである。しかし、AIには、感情もなく、五感の受容体や、胴体や四肢に相当するものが無い。人間の脳の一部に相当するだけである。その為、人間が、情報を入力して、操作してやる必要がある。

同様に、ロボットも発展目覚ましい。手術分野でも、人間なしで自立しているということではないが、人間が条件設定して、set upし、例えばネジを正確に入れるなどの操作をやってくれる。しかし、ロボットには、視覚は備わっていたとしても、やはり、触角、痛覚、深部知覚などの感覚センサーが無いため、ネジが滑っても軌道修正が効かない。そのような間違いは、人間が察知してcontrolしなければならないので、人間相手の実用化には時期尚早であろう。

では、これら、AIとロボットが合体すれば、より人間に近づくことになるかも知れないが、それでもまだまだ人間には遠く及ばない。車の自動運転は、海外では実用化もされているようだが、いまだに実験段階の域を出ず、ときに死亡事故を起こす。その場合、一体誰が責任を負うのか、法整備が不十分である。

では、我々人間に残された特権とは何か?やはり、風の向きや強さ、匂い、光、音、味覚、触覚、痛覚、位置覚などの感覚と、旅行、仕事、娯楽、スポーツ、芸術、友情、共感などの経験であろう。それら、感覚、体験などを十分に楽しみ、良き思い出を沢山作ることは、人間にしかできないことである。そして、死期が近づいてきたとき、いかに充実した思い出が、走馬灯のように頭に浮かぶかが最大の幸福である、と聞く。私の理想は、ピンコロで、die with zero(遺産ゼロで死ぬ)である。人間の五感は、いくらでも磨ける。これからは、これらの感覚を研ぎ澄まし、最終的には第六感をより鋭くするように努力していくべきであろう。その中で、痛みは、人間にとって最も重要な感覚ではなかろうか。現代では、痛みをいかにして軽減、あるいは消滅させるかに躍起になっている。痛みは、体の異常を教えてくれる大切なalarmであり、さもなければ、異常に気づかず、命取りにもなる。このように、痛みは本来大変有難いものである。私が専門としている整形外科、脊椎・脊髄外科は、神経、骨、関節などの痛みを除去するのが主たる目的である。しかし、それと同時に、痛みの有難味も啓蒙していかなければならない。手術で原因が除去できれば簡単であるが、手術の対象にもならない慢性疼痛とも対峙していかねばならない。人間の成長には、精神的、肉体的な痛みが必要だ、という人もいる。そうでないと、何事も身につかない、ということである。若いうちはいろいろ挑戦と失敗を繰り返し、痛い思いをしながら成長していくものである。現代の、特に若い世代は、挑戦による失敗や痛みを避けて通ろうとしている風潮がある。怒られ、悔しい思いをしながら身につけていくのではなく、最初から分厚いマニュアルを頭に詰め込んで、出来るだけ無駄なく、痛い思いをしないようにする。「自分は、怒られるよりも、褒められて伸びるtypeなんで」と、上司に平気で言う。ともかく、親や学校の先生に怒られることなくして大人になり、社会に出てくる。勿論、指導の行き過ぎは良くないが、指導を、叱責ととらえ、パワハラ呼ばわりして、逆に指導者を責める時代である。AIやロボットは、人間に限りなく近づこうとしているが、逆に我々はそれらに近づこうとせず、人間にしかできない、感覚を研ぎ澄まして第六感を磨きながら多様な経験を積んでいくことを目指すべきであろう。

(令和7年12月号)

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