とやの中央病院 小林 哲朗
私の職場は5階の病棟で、鳥屋野潟が望めるところにあります。
冬の天気がよい日には鳥屋野潟の水面に反射する朝日を受けながら、白鳥の飛び立つ姿が見えることもあり、当直明けの疲れを癒してくれます。関東の大学を卒業し、地元新潟で多忙な研修医時代を過ごし、新潟各地を転々としていた時も、時おり病院の窓から見える山々や水田を背景に飛ぶ白鳥の姿が印象に残っており、いつしか渡り鳥への関心が高まり、カメラで撮影するのが趣味になっていったのです。
白鳥は夜間、潟で肉食獣から身を守っていますが、日が昇ると水面を蹴って次々と飛び立ち、田んぼに降りて落穂を食べています。夕方になると潟に上手に着水する優雅な姿を見ることができます。
新潟には冬季に多くの渡り鳥が飛来しますが、鳥屋野潟には白鳥の他にもカモ類などが飛来し、またそれを狙うハヤブサ、オオタカ、時にはオジロワシなどの猛禽類も集まって来ます。
晴れた日などカメラをもって潟の鳥見小屋へ行くと、青空をバックに白鳥が飛び立つ姿や、カモを追いかけて飛び回る猛禽類の勇ましい飛翔を撮影することができます。
渡り鳥たちは、潟や田んぼで餌を食べるために飛来しますが、鳥たちが出す糞はリンや窒素などの化合物を多く含むため、土壌を豊かにし、春からの作物の育成に貢献しているのです。
また、渡り鳥が食べた種子や羽毛についた種子は、あちこちの飛来地で糞として、また自然落下することで植物の育成範囲を劇的に広げることにもつながっているのです。
近年小笠原諸島の西之島が噴火し、溶岩によって生物の居ない死の島のようになってしまいましたが、海鳥の巣や渡り鳥の中継地となると、この理由からいずれ緑豊かな島になり、また独自の進化を観察できる島になるのではと注目されています。
すでに冬の渡り鳥は北へ帰っているころでしょうが、これからは南の島から夏鳥たちが渡って来るので楽しみです。
青空に映える白鳥
朝日を受けながら
(平成28年4月号)