医療法人愛仁会 亀田第一病院 消化器内科 渡邉 東
1979年に映画『エイリアン』が公開された。西暦2122年、宇宙貨物船が他の恒星系で採掘した鉱石を積載し地球へ人工冬眠下で帰還する途中、船内に地球外生命体(エイリアン)が潜んでおり乗組員たち(そのうちの一人はアンドロイド)と戦いを繰り広げるという物語だ。映画の中では医学も発達しており、全身スキャンを高速で行うマシーンで瞬時に病変を感知してしまう。当時は映画の中の世界であり全身スキャンやアンドロイド、人工冬眠など夢のまた夢であり実現などしないであろうと思っていた。しかし、最近ではインターネットを利用したショッピング、車の自動運転、腕時計型の携帯電話などが一般化してきている。犯罪においても人工知能を利用した詐欺事件が起きている。近い将来、宇宙旅行やアンドロイドと働く日も夢ではないと思わされる。
私は消化器内科の医師であり、特に内視鏡を中心とした診断や治療に携わっている。内視鏡の進歩にも目覚ましいものがある。内視鏡は1950年代に登場し1960年代にファイバースコープ、1970年代にビデオスコープ、2002年よりハイビジョンシステムが開発された。現在では早期の胃癌や大腸癌は外科的切除ではなく内視鏡的に切除出来るようになっている。医学の進歩もまた日進月歩であると言えよう。この勢いで医学が発展していけば、将来は内視鏡は必要なくなるのではないか。内視鏡がなくなるのは寂しいが、瞬間診断マシーンで診断し治療出来る時代もそう遠くはないであろう。それまでは内視鏡診断、治療(上下部内視鏡的粘膜下層剥離術、内視鏡下膵胆管造影+治療など)に全力で取り組む意気込みである。
『人間が想像出来ることは必ず実現出来る』とフランスの作家ジュール・ヴェルヌは言っている。西暦2122年、アンドロイドと共に宇宙船に乗って鉱石を採掘しエイリアンと戦う時代となるかもしれない。
(平成29年5月号)