佐潟荘 精神科 増澤 菜生
金爆(ゴールデンボンバー)が私の心の琴線に触れた訳、それは一言でいうならば「子どもの心に戻れる」。老若男女その他諸々ノーボーダー、垣根のなさ、自由さ。音楽を「聴く」だけでなく、観て踊って歌って笑って泣いて、五感フル活動で楽しめる形。「楽器が下手だけど性格のよい仲間とバンドを続ける」ためのエアという形。欠落を逆転の発想でプラスに変える、発想の斬新さにいつも驚かされる。
リーダーは、一時は強迫性障害で受診した過去を持つ。でも精神医療は無力で、創作活動の過程で消褪し、考え過ぎて悩む性質が逆転奏功。「表現活動で突き抜けてきた」リーダーは「自分の表現を阻害するものは悪」と語っている。臨床では表現の出口を失って、無意識の内容物を言語化・象徴表現化できず、精神症状化・行動化に至るケースに出会う。表現を周囲が受け取れる形にすることが何より大切と思う毎日である。
多彩で粒ぞろいなサウンド、ホットでカラフルな感情を伝える声、日陰に置きがちなテーマを日向に出し居場所をくれる歌。心の奥底から湧き出てくる思いに、音とフレーズが降ってきて、産出する過程で新たな物語になる、映画のような歌。「女々しくて」は皆さんもご存知、情けなくも縋る心を、「ギーガー」は洗脳世界を、「ローラの傷だらけ」はストーカー的世界を。いい曲いっぱいあります。中でも「世界平和」「おはよ」「グローリーラブ茶番版」が好きです。
ビジュアル系なのに格好つけず、自らを揶揄し笑える姿勢。その笑いは無邪気で素朴、明るい。「ザ・V系っぽい曲」では「金爆演奏しろ!」と連呼する。4人4様、多方面で活躍しているが、ライヴこそ彼らの真骨頂。ライヴ後にあらためてアルバム『フェスベスト』『ノーミュージック・ノーウェポン』を聴こう。ギターソロ、実は笑撃パフォーマンスタイム。音楽にバカバカしさ全開のパフォーマンスがドッキング。皆さんも金爆のライヴに是非ご参加ください!
金爆人形
最新曲「CDが売れないこんな世の中じゃ」のPVから
(平成29年6月号)