信楽園病院研修医 古沢 祐真
「ジョジョ」は非常に有名な漫画であり、この夏、第4部が実写映画化されました。本稿では、私が考える「ジョジョ」の最大の特徴について考察し、最後に少しだけ医療との関わりについても触れてみたいと思います。
「ジョジョ」といえば、その絵柄・構図、独特のセリフ回し、擬音、主人公が変化していく部構成、「スタンド」という超能力の表現手法など様々な特徴がありますが、私が考える他の漫画にはない最大の特徴は、「主人公や敵が単調に強くはならない、ときとして弱くなる」ということです。もちろんそれでいて面白さが損なわれない、いえ、むしろそれゆえに面白いとさえ言えるのかもしれません。
他の多くの少年漫画でみられる主人公と敵の強化合戦は、合理的な範囲では非常に面白いものであり、途中で敵が弱くなれば漫画としての魅力が減退しかねません。実際に「ジョジョ」の作者である荒木飛呂彦先生は「第4部に入って敵が弱くなった」という意見を寄せられたことがあるそうで、先生は単行本45・46巻の内表紙で際限のない強化合戦を否定し、以下のように答えています。
(引用開始)
(前略)しかたなく答えると第4部は「人の心の弱さ」をテーマに描いている。『心の弱い部分』が追い詰められたり、ある方向から見ると『恐ろしさになる』ということをスタンドにしているのだ。(中略)それと世の中を見渡してみると本当に『強い』人っていうのは悪い事はしない事に気付く。「悪い事をする敵」というものは「心に弱さ」を持った人であり、真に怖いのは弱さを攻撃に変えた者なのだ。
(引用終了)
最近でも、心の弱さを攻撃に変えてしまったところを録音され、糾弾された方がいました。また、「真に怖いのは弱さを『症状』に変えた者なのだ」と読み替えれば、医師が診療を行う際にも胸に留めるべき教訓になるような気が致します。たかが漫画、されど漫画、一読に値するのではないでしょうか。
(平成29年8月号)