安藤 伸朗
都心にあって語り合える空間はあるようでない。まして学会の打ち合わせを手頃な値段の昼食付きでとなるとなかなか難しい注文だ。ここ東京日比谷の帝国ホテル(中2階)のオールドインペリアルバーは、上記の条件を全て満たしてくれる。
バーは、1923年から1967年まで続いたフランク・ロイド・ライト設計による旧館の系譜を継ぐ。13メートルほどあるローズウッドの光沢あふれるカウンターは、心地よい角度にカーヴィングが施されており、カウンターを照らすスポットライトは、心安らぐ空間を創り出している。バックバーに見られるマヤ調のテラコッタとバー左奥の壁画は「ライト館」から残された一部である。カウンターに置かれたアッシュトレーにも、ライトのデザインが取り入れられている。
器だけが優れているのではない。帝国ホテルのバーは、東京會館とともに日本のカクテル文化を黎明期から支えて来た矜持に溢れている。1985年には、米誌『Newsweek』により、ビジネスバー部門の世界一に輝いた実績もある。在日外国人記者が通い、離日後に訪れたとしても、名前も好みも忘れずにいる一級のバーとして評価された。また、2007年には『Whisky Magazine』からホテルバーオブザイヤーとして表彰されている。
夜は大変込み合い、並ばないと入れないほどであるが、昼は穴場である。
帝国ホテル
オールドインペリアルバー
住所 | 〒100-8558 東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテル東京 本館中2階 | |
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電話 | 03−3539-8088 | |
営業時間 | 11:30~24:00(ラストオーダー) | |
席数 | 72席 | |
料金 | 1,470円~ ※消費税込・サービス料別 |
(平成24年9月号)