新潟市医師会報より

和洋食の老舗 ピーア軒

吉村　光政

ピーア軒は新潟市役所や越後線白山駅にもほど近い、大正12年創業の歴史ある和洋料理店である。店名の「ピーア」は初代創業者の間松太郎氏が、当時西堀の西洋料理店（イタリア軒の前身）で修業をしていたときイタリア人コックのピエトロ・ミリオーレ氏から「ピーア」と親しみを込めた愛称でよばれていたことに由来する。（ピーアはイタリア語の「梨」という意）

1階のレストランには、大きめのテーブルとソファがあり、ゆったりとくつろげる。2階は個室、3階は大広間で、家族連れ、仲間内との小宴会、法事などどんなニーズにも応じることができる。気軽に頼めるランチメニューも豊富で、パスタ、ピザ、グラタン、シチュー、カレーなどの洋食が中心だが、和食メニューも取り揃えてある。私のお勧めは村上牛入りカレーライスとトロットロになるまで煮込んだタンシチューだ。いずれも深いコクとうまみがあり、一度食べたらやみつきになる。ことしピーア軒は90周年を迎え、記念事業の目玉の一つとして「牛鍋」を復活させた。牛鍋は江戸時代後期に横浜、東京で始まり、明治になると文明開化の波に乗って“牛肉を食べないものは文化人にあらず”といわれ、関東を中心に大流行し、最盛期には550軒もの牛鍋屋があったという。しかし、関東大震災でそのほとんどが消失し、以後は関西で好まれていた「すきやき」にとってかわられた。牛鍋復活を思いついた広田氏によれば、具材は徹底して県産品にこだわり、吟味した味噌に酒粕や当店秘伝のタレを加えるなど研究をかさねて納得のゆくものになったという。丸い浅めの鉄なべに四角に切った厚めの和牛肉が並び、中央に味噌だれとぶつぎりにしたネギ、点火してまもなく味噌が溶け出す。ジューっと牛肉が焼ける香ばしい薫りとともに甘い肉汁が口いっぱいに広がる。これぞ“文明開化の味”であろうか。一度お試しあれ。

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