風間 隆
のれんを潜ると、厨房を取り囲むカウンターが店いっぱいに広がっているのが目に入ってくる。テーブル席はない。二十年近く前に初めてこの店に入ったとき、その立派な白木のカウンターに圧倒されたのを覚えている。
ご主人が修行した目黒のとんきは、度々マスコミで取り上げられるトンカツの名店である。目黒のその店には行ったことがないが、ネット情報によれば、広い白木のカウンター、見通せる厨房、そしてその作業風景は新潟のこの店とほとんど同じだ。ご主人がこだわったという檜のカウンターは、手入れに大変な手間がかかるとのことだが、今でもその白木の風合いを保っている。そして、それに囲まれた厨房には常に清潔感が感じられる。
広い厨房の中で黙々と作業するご主人の手際よい作業がカウンター席からすべて見える。まるでテレビ番組、『料理の鉄人』のキッチンスタジアムのようだ。揚がったカツに、縦だけでなく横に切れ目を入れる独特なカッティングをするのだが、そのリズミカルな動きには熟練が感じられる。
メニューは、ロースカツ、ヒレカツ、串揚げと、それらの定食のみである。私のお勧めはヒレカツ定食である。ここのトンカツが美味しい理由は、上質な肉を使っていることは当然であるが、その衣にあると思う。通常のトンカツのそれと比べると、少し厚めで、その表面はパン粉のザラザラはなく、どちらかというとデコボコといった感じである。そこに特製の洋辛子とソースをたっぷりつけて食べるのが好きだ。このソースはトンカツとキャベツのどちらにも相性がよい。とんきで十年以上修行しないと、そのレシピは教えてもらえないという。これをキャベツにもたっぷりかけて食べる。胸焼けを起こしやすい私であるが、ここのトンカツではその記憶がない。
修行した名店のやり方を頑固に守っている店である。
とんかつ とんき
住所 | 新潟市中央区白山浦1-657-1 |
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電話 | 025-230-6805 |
営業時間 | 11:30~14:00 17:00~20:45 |
休業日 | 火曜日 |