中村 茂樹
長もの好きな私は、ときどきパスタを食べたい「発作」を起こす。しかしこれぞという店にはなかなか出会わない。有名店は気取っている上に、大抵量が少なく、下町派の私には向かない。かの伊丹十三は「イタリア料理は基本的に家庭の味である。つまりフレンチと違い、イタリアンはレストランの味を家庭でも再現できる。」(『女たちよ!』)と言った。そんなマンマの味を質量ともに楽しめる、気のおけない店が好みだ。
そんな私に県立新発田高校の後輩 高沢大介氏(菊水酒造代表)が「いいお店がありますよ」と紹介してくれたのが、新発田市の「ラ・ジェンマ」である。早速オカーサンを助手席に乗せて小一時間ドライブすると、広いデッキと庭園付きの、家のような店構えが迎えてくれた。
オーナーシェフの菊池さんは気鋭の41歳。私たち世代には懐かしい、古町の名店「ラ・バルカローラ」に幼少期にご両親に連れて行ってもらい、その味に憧れてこの道に入った。地元の新鮮な食材を用いた独創的で多彩なメニューには、若さの矜持と本場仕込みの腕前とが、随所に感じられる。パンやデザートの細部に至るまで、すべて手作りでおいしい。料理で表現すること自体に、プロとしての幸せを感じている人なのだろう。
伊丹十三に倣い、早速自宅で再現を試みた。まず鯛とアスパラのパスタ。ソースがよく絡むように少量の小麦粉を用いたが、後でシェフに聞くと、サイコロ状とペースト状のジャガイモを半量ずつ使うのだそうだ。プロは芸が細かい。別にイワシとトマトのパスタ。炒った細かいパン粉をパルメザンチーズに見立てて、たっぷりと振りかけるのがシチリア風である。
お向かいの家族を呼んでご馳走したら、美人の奥さんから「あら、美味しいわ!」と褒められた。ちなみにお店では、このあとピスタチオのジェラートがついて、なかなか乙なものだった。
ラ・ジェンマ
住所 | 新発田市緑町1丁目110番 |
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TEL&FAX | 0254-27-8080 |
ランチ | 11:30~14:00(LO) |
ディナー | 17:30~20:30(LO) |
定休日 | 月曜、第2火曜 他 |