山口 雅之
昨年の8月号で札幌のピザの名店を紹介させていただきましたが、今回紹介するのは札幌市中心部の狸小路にある隠家的炉端焼きのお店です。今年の6月1日に放送された中国料理界の重鎮で札幌出身の脇屋友詞シェフの「アナザースカイ」でも取り上げられました。
北海道を旅行される方の多くが、滞在中に一度は海の幸のお店に行かれると思います。ガイドブックやネットにきれいな写真付きで紹介されているお店の大半は、チェーン店の居酒屋の少し上のクラスぐらいと思って下さい。大きな期待を持って食事に行かれて、がっかりされた方は少なくないはずです。特に海の幸の宝庫である新潟から行った方のがっかり度合いはかなり大きいと思います。私も札幌の同級生に紹介してもらったり、ネットで調べたりして訪れたお店で、北海道の海鮮の実力はこんなものではないはずと何度も思いました。ネットで高評価を受けているのは、値段の割にお得感があるお店ではないでしょうか。海鮮は食材の質と鮮度が命ですので、感動するにはある程度の出費が伴います。
「めんめ」は地下鉄すすきの駅から歩いて5分の狸小路市場の路地にある炉端焼きのお店です。地元では隠れた名店として名前が知られています。北海道では魚の“きんき”のことを“めんめ”と呼んでいます。“めんめ”は東北、北海道の太平洋やオホーツク海に生息する赤い体と大きな目が特徴の深海魚で、北海道では高級魚として知られています。この魚の名前がお店の名前になっていますので、当然、“めんめ”の焼き物、煮物が名物ですが、高級魚ですのでそれなりのお値段になります。新潟の料理屋で“のどぐろ”を注文するのと同じと思っていいかもしれません。“めんめ”以外で焼き魚といえば間違いなく“ほっけ”でしょう。羅臼の“真ほっけ”の大きさと脂の乗りには驚かされます。余談ですが、北海道で出回っている“真ほっけ”はほぼ道内産ですが、“縞ほっけ”のほとんどは輸入品です。以前はロシア産が多かったですが、今はアメリカ産が中心となっています。北海道産を味わうならやはり“真ほっけ”です。焼き物の前にお刺身を注文するのであれば、“つぶ貝”、“ほたて貝”、“いか(やりいか)(するめいか)”、“北海しまえび”は外せません。海鮮以外にも野菜系の焼き物もお勧めです。アスパラ、じゃがバターは鉄板ですが、夏場の焼きとうもろこし(とうきび)はお代わりしたくなる美味しさです。とうきびは枝豆と同じで、収穫後どんどん甘みが落ちていきますので、“朝もぎ”を食べなければその美味しさを味わうことはできません。新潟県人が“朝もぎ”枝豆にこだわるのと同じで、道産子は甘みの抜けたとうもろこしには厳しい評価を下します。食材の鮮度にこだわらなければ、ネット宣伝で観光客の集客はできても、地元民の足は遠のきます。地元の常連客でいつも混んでいるこのお店は、食材へのこだわりが高く評価されているのだと思います。
これも余談ですが、札幌市内では大通公園などで焼きとうもろこしを販売する「とうきびワゴン」が名物ですが、“朝もぎ”とうきびは使っていません。また、前年度の冷凍とうきびの在庫が残っている間は生のとうきびには切り替わりません。札幌で旅行者が新鮮で甘い“朝もぎ”とうきびを味わうのはなかなか難しいことなのです。
「めんめ」はホームページもなければ、ネット予約もできません。札幌へ行かれる際には早めにお電話で予約を取って下さい。小さなお店ですので、飛び込みで行ってお席が空いている可能性は限りなくゼロです。店内には並べられた食材を見ながら食事のできるカウンター席と奥にテーブル席があります。2階にもテーブル席があるようですが、いつもカウンター席を予約するので上がったことはありません。炉端焼きの雰囲気を味わうなら、断然カウンター席がお勧めです。ただ、最初にいっぱい注文してしまうと、料理のお皿を置く場所がなくなってしまいますのでご注意ください。特に“ほっけ”のお皿はかなり大きいです。
狸小路市場の中のお店ですので、トイレは共用トイレしかありません。気になる方はお店を出てすぐそばにある狸小路のアーケード内のホテルかコンビニのトイレをご利用ください。
脇屋友詞シェフ出演の「アナザースカイ」はhuluで視聴できますので検索してみてください。
めんめ
住所 | 札幌市中央区南3条西6丁目狸小路6狸小路市場内 |
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TEL | 011-241-6810 |
営業時間 | 17:00から24:00 (23:00ラストオーダー) |
定休日 | 日曜日 |