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新潟市医師会報より

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蕎麦屋「まえ弥ま」の紹介─グラフィックデザイナーが蕎麦屋になるまで─

大西 洋司

新潟市の中心部から116号線を巻方面に走り、善光寺の信号を左折して、約700m行った所、右側に「蕎麦」の小さな看板が出ている。徐行しながら右側を見ていないと、見落すので注意!

その角を右折して、50mほど左側に小さな駐車場がある。どんぐりの木が目印だ。

蕎麦屋の主人、前山弥寿雄氏はやや細めで寡黙の人だ。今年66才。

此の地に開業して、約22年になる。蕎麦屋を開くまでの軌跡が面白い。

もともと東京のデザイン学校を卒業して、新潟で身を立てていたが、おいしいそばを食べたくなった。自分の頭の中では、『のど越しが良くて、透明感がある』、そういう蕎麦を想い描いた。色々の蕎麦雑誌を見て、良さそうな蕎麦屋を福島、長野、東京、神奈川、静岡、大阪、島根など転々と食べ歩きしているうちに、静岡で自分の思い描いていた理想に近いそば屋に出会った。

デザインの仕事の傍ら、家で試行錯誤しながら、理想のそばを求めてひたすら、打ち続けた。

師匠につかず、独学でそば粉の産地・挽き方・つなぎの入れ方など、ただひたすら、探究し続ける事、8年、30代半ばにして、とうとう思いはとげられ、自分の理想のそばが打てるようになった(この間、試作のそばを、ひたすら食べ続けてきた家族の忍耐強さにも頭が下がる)。

蕎麦は温度・湿度などの変化に応じて、水加減が難しい。

ベテランの蕎麦職人でも、自分で満足のいく蕎麦ができるのは、年に数回という話を聞いたことがある。

石臼での粉の挽き方も、製粉屋の職人に微妙な加減の挽き方の注文を出す、いわゆる職人泣かせである。

このそばを蕎麦好きの知人たちに食べてもらったら、絶賛され、その後更に研鑽を積み、42才で生家の近くに開業した。駐車場は数台。お店はこぢんまりとして、椅子席が7席、座布団席が6席くらいである。夫婦で切り盛りしているので、それで精一杯である。白壁の内装で、大きな窓があり、清潔感あふれる。南の窓からは、木の間隠れに守門岳が遠望される。蕎麦屋にしては珍しく、バロックの曲が控え目に、流れているのも、ご主人の個性の表れである。

そば粉は福井産が主だが、時期によっては、鳥取産・北海道産も用いる。

ここの蕎麦の特徴は、その蕎麦の美しさにある。そば粉は挽きぐるみ(ソバの実の殻)が混じっていて、透明感がある。外側が柔らかく、芯にこしがある。初めて、食した時は、どうして、こんなに透明になるか、不思議だった。

ご主人によれば、同じ圃場でも収穫年で透明感や風味が異なるという。

腹を満たしたい人は、並みでは物足りないであろう。天ぷらは仙台の青葉区の天ぷら専門店で修業した。エビの歯ごたえとそばのやわらかさのコンビネーション。たれのさわやかさが、ここでしか味わえない至福の時をもたらすでしょう。夏期には写真のような梅おろしそばがある。逸品である。後は、ご賞味あれ。

蕎麦屋「まえ弥ま」

TEL 0256-88-5433または、090-2755-5433
営業時間 営業はお昼のみ。
11:30~13:30(13:00 L.O.)
要予約。
定休日 月曜・火曜

(令和8年9月号)

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